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FRB、いよいよ離陸―米国利上げは、ドルと米国株式にどう影響する?

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FRB、いよいよ離陸―米国利上げは、ドルと米国株式にどう影響する?

突然ですが問題です。2007 年からの毎年と、2016 年。何か違いはあるでしょうか?

答えは―今年 2016 年は、ここ 10 年近くで初めて、FRB が米国経済を積極的に刺激「しない」で あろう年になるでしょう。

見方を変えて、前回 FRB が米国政策金利の引き上げをした時を振り返ってみます。今私たちが日々 当たり前に使っているアメニティグッズ、つまり iPhone、Twitter、Netflix などはまだ発明されて いませんでした。米国ではジョージ・W・ブッシュ大統領、英国ではトニー・ブレア首相がリーダ ーであり、またリーマンブラザーズ、ベアー・スターンズ、ワシントン・ミューチュアルが世界の トップ銀行の座にありました。

前回の利上げからかなり時間が経過していますが、ここで過去の利上げサイクルに伴う米ドルと米 国株式のパフォーマンスを振り返ってみたいと思います。もちろん、過去のパフォーマンスは将来 の結果を保証するものではなく、毎回それぞれ違った特色が出るものですが、投資家にとってはや はり過去の傾向をとらえることが、2016 年の「新しい正常化」の時代を進むにあたっての羅針盤 となるでしょう。

さて、詳しく見ていく前に、まず投資家がふまえておくべきポイントとして、「FRB が政策金利の 引き上げを行う際は比較的短期間にとどまる」という傾向を知っておきましょう。FRB は過去 35 年間で 6 回、明確な利上げの期間を持っていますが、典型的な利上げ期間は 1 年から 2 年程度にと どまり、その後は引き下げを余儀なくされています。金融引き締め期間の短さの理由としては、速 過ぎる利上げのペースや、そもそも前提に困難な経済状況があったことなど様々な場合があります。 しかしいずれにせよ利上げが始まった際、中央銀行がタカ派的金融政策を長期的に堅持すると信じ、少なくとも 5 年程度にわたって利上げが継続すると予想した投資家は、実際の結果に落胆すること になったでしょう。

米ドルへの影響は?

伝統的なセオリーによれば、米国の政策金利の引き上げは、それが世界の趨勢に反して実施される 場合は特に、米ドルを強くします。近代の、野球選手から哲学者とされたヨギ・ベラは、「理論上、 理論と現実に差異はない。だが現実的には、そこに差異がある」と言っています。

下のチャートは、FRB による「対主要通貨貿易加重ドルインデックス」を表したもので、利上げ実 施前 90 日と後 180 日の傾向をまとめています。より広く参考にされているドルインデックス (DXY)とは少々異なっており、米ドルのパフォーマンスを正確に描き出しています。



上のチャートからは、利上げサイクルの始まりとともにドルのパフォーマンスが多様な方向で大き な変動を起こしているのがわかります。1983 年と 1988 年の利上げでは実施後 3 ヶ月以内に 10% も高くなっている一方、1986 年、1994 年、2004 年については 5%も下がり、1999 年のケース では実施後 180 日間で実施時のレベルまで戻っています。

下表にまとめたように、平均としては、利上げ実施後半年間で 3%超下がったことになっています。



こうなると、現実は「利上げドル上げ」と単純に言えるものではないことがわかってきます。

ではより深く水晶玉をのぞいてみると・・・。

利上げのドルに対するインパクトは、実施以前からマーケットに織り込まれた期待に FRB がいかに 応えたかによる、というのが論理的な見方かもしれません。FRB による最新の経済予測サマリーに よると、FRB のメンバーによる 2016 年の金利引き上げ回数予測の中間値は 4 回で、投資家のほう がずっと利上げペースに慎重であるといえます。実際 CME の FedWatch ツールによれば、フェデ ラル・ファンド金利先物取引では「2016 年末までで 2 回の利上げ」にのみ値上がりが見られます。 もし米国経済の伸びが続き、2016 年に 4 度という利上げの期待に応えられるのであれば、他の主 要通貨国との金融政策の乖離から、年内に米ドルは高値の新たな段階をうかがうようになるでしょ う。

しかし、私たちの分析では、FRB が 2016 年内に実施できる利上げの回数は 2 回ほどにとどまるで しょう。直近の、米国経済で外国為替に関連のある部門(特に貿易収支や製造業)の落ち込みに見ら れるように、米ドルの高値がすでに経済活動に重くのしかかってきています。

これを裏付けるように、直近の 1 月の FOMC でも利上げが見送られました。理由はやはり上記の米 国経済の減速と原油価格の深刻な低迷による世界経済の不透明感とされており、FRB としてはアグ レッシブに速い利上げペースを堅持するのではなく、状況を注視しながらより慎重にタイミングを 見極めていくという姿勢を見せたものととらえられています。

FRB が最も避けたいのは、政策金利の引き上げを進め過ぎて、経済成長や表れ始めたインフレ傾向 の息の根を止めてしまうことです。このため、利上げに関しては慎重過ぎるぐらい慎重にことを進 めるでしょう。もしこのシナリオが現実のものとなれば、FX における王としての米ドルの君臨は 2016 年内に終わることになるでしょう。

米国株式市場への影響は?

「FRB とは闘うな」というのが、近年の米国株投資家の間での支配的なモットーになっていました。 FRB が金融システムを繰り返し活性化するのがわかっているため、米国株式指数の落ち目を狙って 積極的に買いを入れる動きがセオリーとなっていたのです。しかし明確に FRB の姿勢が引き締め政 策へと転換した今、コンスタントに上昇していた繁栄の日々は終わりを迎えてしまうのでしょう か?

ここでも、過去の証拠が一般的な常識に疑問を投げかけます。



上のチャートが示すように、米国株式(ここでは S&P 500 が代表しています)は利上げサイクルの開 始前 90 日間および開始後 180 日間の両方において、平均して上昇しています。もちろんこの傾向 は、1986 年 12 月の利上げに続く大幅な値上がり(紫のライン)で大きく強調されています。ちなみ に、この 1986 年のケースでは、数か月後に 1987 年の「ブラックマンデー」の大暴落を呼ぶこと になります。いずれにしても、S&P 500 は過去 6 回中 5 回、利上げサイクル開始後 180 日間での 上昇、つまり FRB の「離陸」の経験をしているといえるでしょう。

このデータの数値一覧は下表のとおりです。



これらのデータに基づくと、何か強い結論を導くことは難しいといえるでしょう。FRB の利上げの ペースやその見通しには関係なく、利上げ開始後 6 か月間では米国株式市場は上昇傾向を見せてき ているようです。過去データから言えば、政策金利の引き上げは S&P 500 にとって悲愴な弔いの 鐘とはならないようです。

ただその後の S&P 500 のパフォーマンスは、やはり FRB の金融政策に大きく影響されるでしょう。 本来希望していたような速いペースで利上げを続ければ、米国株式のパフォーマンスは伸び悩むこ とになるでしょう。主な理由としては、債券がより魅力的な投資対象になることや、利上げにより 米国企業の借入れコストが増加することが挙げられます。逆に FRB がより緩やかな政策を取る場合、 米国株式をサポートすることになるでしょう。ただ、これまですでに全体的に値上がりしているた め、爆発的な上昇相場となるのは難しいでしょう。

いずれにしても、前回の政策金利引き上げから相当の時間が経過しているため、利上げが米ドルや 米国株にどのような影響を与えるか、様々に流れている見通しの中に間違いがあるとしても不思議 ではありません。前述のように、必ずしも以前のパフォーマンスが将来の値動きを指し示すとは限 りませんが、過去のデータはやはりマーケットにおいて貴重な判断材料のひとつとなります。本レ ポートがお客様にとり、歴史的な利上げイベントでアドヴァンテージを取られるための一助となれ ば幸いです。

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