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マイナス金利導入、急激な円高―ドル/円をどう読む?

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日銀のマイナス金利導入という新元素の半減期は短いもよう

ウィキペディアによると、水素 7 という放射性同位元素は最も短い半減期、10 のマイナス 24 乗 (1 兆分の 1 をさらに 1 兆分の 1 にした数)秒だそうです。もちろん金融マーケットでそれほどの 速さで動くものは、たとえ最先端のアルゴリズムをもってしてもありえないわけですが、1 月の終 わりに日銀が発表したマイナス金利導入というサプライズの半減期はショックなほど短く、相当速 い 2016 年のマーケットのスピードからしてもより速い展開でした。

マイナス金利というルビコンの川を渡る、という決断は日銀にとってはとても大きな政策の転換で あることはたしかなのですが、トレーダーの間ではすでに金利の引き下げが経済に与えるインパク トが大きくはないことに気づいています。金融政策の変更が経済に与える効果は比較的小さく、準 備預金のうちたった 10~30 兆円分ほどにしか影響を与えられない(そして依然として他のほとん どの準備預金は引き続き 0.1%の利子を生む)のです。

日銀はいずれ、利率の適用範囲を広げるか金利のさらなる引き下げを選択する可能性がありますが、 現時点では、せっかくの日銀の決断も世界中のマーケットを包むリスク回避の大波にただ完全に飲 まれてしまっています。言い方を変えれば、マイナス金利導入の有無にかかわらず、いずれにして も日本円は確固たる安全通貨とみなされているということです。このため、円の価値の動向は米国 や日本の経済指標と合わせ、他の株式やコモディティの市場等の動きに左右されるといえるでしょ う。

ドル/円に中央銀行からの横風のあおり―日銀の市場介入か

特に日本や米国の中央銀行総裁にとっては忙しい日々が続いていることでしょう。この 2-3 週間、 円は安全通貨として、キャリートレードからの資金の巻き戻しが殺到しており、ドル/円は 7 日間連 続で下落、115.00 レベルを下回り、新しい 15 ヵ月最安値をうかがっています。 日銀にとり、物価上昇率と輸出業績をダウンさせる円高は最も避けたいものです。投資家の中には、 日銀が円という通貨の価値を下落させるために為替介入を行うと見る向きもあるほど、状況は悪く なっています。

ここでおさらいとして、中央銀行による為替介入の 3 つの段階についてみていきましょう。1 から 3 にいくにつれて介入の度合いが強くなります。

1) 口先介入: 最初のレベルは、この 2-3 年世界中で繰り返し見られていますが、口先介入、つま りは「おしゃべり」レベルです。ここでは中央銀行より、その通貨が「過大評価されている」こと、 また価値の下落が「適切である」ことにつき、あいまいなコメントを出すことです。 特に日銀はここ 2-3 週間、口先介入に力を入れており、メジャーな金融政策担当者の間では最近の 円の動きは「荒れて」おり、「投機的な動きに注視して」いると言われています。

2) レートチェック: レートチェック、または「問い合わせ」とは、中銀が FX ディーラーに現在の 為替レートを問い合わせることで、自国通貨の売却を検討していることの意図を示しています。地 政学的比喩を用いれば、このステップは軍事力を時々示しておくために実施される軍事訓練のよう なものです。

実際にレートチェックを行ったかどうか、また実施したとすればいつか、ということは特定が難し いものですが、日銀が 2/10 のアジアマーケットで 114.25 をつけた際にディーラーに電話があっ たという未確認情報もあります。ドル/円に中央銀行からの横風のあおり―日銀の市場介入か 特に日本や米国の中央銀行総裁にとっては忙しい日々が続いていることでしょう。この 2-3 週間、 円は安全通貨として、キャリートレードからの資金の巻き戻しが殺到しており、ドル/円は 7 日間連 続で下落、115.00 レベルを下回り、新しい 15 ヵ月最安値をうかがっています。

3) 市場介入: 介入の段階の最終はもちろん、中央銀行が実際にマーケットで注文を出し、自国通貨 の価値を下落させようと取引することです(別の言い方をすれば、ここで中央銀行はレートチェッ クを本当の意味で行うことになります)。

日銀はすでに口先介入を繰り返すパターンを確立していますが、これは 2010 年から 2011 年にか けて円が高くなっていった頃からのものでしょう。日銀は当時から、積極的な市場介入をしていま せん。しかしもしこのままドル/円の下落が続くようであれば、日銀は行動せざるを得なくなると多 くのアナリストは読んでいます。

円高に関する懸念の増加を気にしつつ、ドル/円のトレーダーは FRB イエレン議長の議会証言にお ける発言意図も読み解かねばなりません。質疑応答セッションは証言が各紙にリリースされた少し 後から始まりますが、リリース前の要点の報道によれば内容は比較的ハト派的、マーケットの期待 におおむね沿っているといえるでしょう。イエレン議長は「米国の財政状況は成長へのサポートを 失いつつある」「もし経済状況が期待に沿わない状況なら、政策金利はより低い道筋をたどるのが 妥当」とコメントしており、FRB が最近のマーケットの成長に懸念を抱いていることがわかります。

おおむね、ドル/円のトレーダーはイエレン議長の要点コメントについては冷静に受け流しており、 ドル/円のプライスはやはり急角度で 115.00 から 114.60 に落ちています。このため、もし質疑応 答セッションでのイエレン議長のスピーチで FRB が本年前半中に利上げをしないことが示唆される と、ドル/円は一層押し込まれ、日銀が早期の為替介入に追い込まれることになるでしょう。

FRB イエレン議長の証言でドル急落、株式市場下落と相まって円は引き続き急伸

FRB のジャネット・イエレン議長の米上院議会での証言が今後の政策金利引き上げの見通しに暗い 影を落としたととらえられ、これにより米ドルの下落の傾向が続いています。イエレン議長がマイナス金利の導入の可能性を排除しなかったため、投資家はすでに、政策金利が逆に引き下げられる 可能性も視野に入れています。

ここへきて米国の政策金利の見通しが劇的に転換してしまったことで、強さを誇っていたドルに大 きな重圧がかかってきており、特にドル/円の通貨ペアでこの傾向が顕著にみられます。当然ながら、 ここ 2 週間のドル/円の急落の原因は FRB のハト派スタンスからくる米ドルの落ち込みだけにある わけではなく、同時に様々な要因から安全通貨としての円に資金が還流したということにもありま す。

別々の原因からドルが落ち込み、円が上がったことで、ドル/円のペアは 2 月の初めの 2 週間で 8%以上も下落しました。この直前の 1 月終盤には、日銀によるマイナス金利の発表によって円が 弱くなり、ドル/円は上がっただけに、その後の方向の転換はとても劇的なものになりました。

FRB による金融政策引き締めの見通しが急速に減退したことでドルにかかっている重しは、そうす ぐには取れそうにもありません。同様に、グローバルの株式市場の低迷により積みあがっている恐 怖心理やボラティリティもしばらく続くとみられ、これにより円の値上がりも続くでしょう。

つまりドル/円についての下落傾向はまだ続くとみられます。2 月初頭より、118.00 や 116.00 な ど、また直近では 114.00 など、いくつものキーとなるサポートラインを数日間という急角度で突 き破って下落してきています。2/11(木)の時点で 111.00 を少し下回る 15 ヵ月最安値ラインに届 こうかというところまで達しており、ドル/円はさらに下落の勢いを増しながら、次のキーとなる 110.00 や 108.00 といったサポートレベルをターゲットにしていくでしょう。

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