今週の注目通貨ペア、米ドル/円
ファワド・ラザクザダ 2023/03/28 10:44 JST
今週の注目通貨ペアのコーナーにようこそ。主要通貨ペアの中でも、ここ最近の円のボラティリティの高さと、米国の重要な経済データの発表が控えていることから、今週注目したいのが米ドル/円だ。
- 主な公表データの中でもコアPCEに注目
- リスク回避の心理が緩和するにつれ円価格は下落
- 米ドル/円は利下げの期待に合わせて値下がりが続く可能性
リスク回避の心理が緩和するにつれ、米ドル/円は値を戻す
週の始まりにあたって市場のムードははっきりと明るくなっていた。投資家たちは規制当局が銀行セクターのストレスを抑え込むことができると期待している。 株式指数と合わせ、米ドル/円や他の円ペアはいずれも値を戻した。
リスクに対する懸念は金曜後半のセッションではやわらいでおり、この勢いは月曜前半の取引にも引き継がれた。
とはいえ新しいニュースがないことから、市場の関心は引き続き銀行セクターの状況に向けられている。新たなストレス要因のサインが見られれば、円高が加速し米ドル/円のペアは値下がりすることが考えられる。
最近の米ドル/円の下落要因は?
円は広く避難先通貨として認知されていることから、ここ数週間ではどの通貨ペアでも強さを見せていた。ドイツ銀行が破綻の危機に瀕しているという懸念から避難先資産が軒並み高騰し、米ドル/円は一時130.00円を切った。
各国の国債利回りと日本のそれとの差が縮小したことから、円価格は米国をはじめ世界的な債券の値上がりからも追い風を受けている。銀行セクター内での危機の伝播への懸念から、投資家が資産の避難先を国債と金に求めたことで、ここ数週間の国債利回りは下がり続けている。
というわけで、銀行セクターのストレスと各国中央銀行総裁のそこまでタカ派的ではない発言により、市場は世界的な金融引き締めの一旦停止を織り込み始めている。実際、先週は銀行セクターに関する懸念がふくらんだことで、6月にはFOMCによる25bpの利下げが実施されるという観測が金融市場に広がった。さすがにこれは過剰反応かもしれないが、状況がどれほど急に変わりうるかを示している。
米ドル/円は引き続き下落する可能性
米ドル/円が再び下落を続ける可能性は十分にある。主要国の中央銀行が利上げを停止し、それほど遠くない将来には利下げを始めるという見込みが市場で強まれば、国債利回り、そして米ドル/円には追い風となるだろう。
銀行セクターに新しい懸念材料が見つかるか、世界経済の減速の兆しがさらに明らかになり始めれば、新たに債券が強さを見せる可能性がある。結局のところ、史上まれにみる中央銀行のハイペースな金融引き締めサイクルの効果はまだ経済全体に浸透していない。一方、日本銀行はこの高インフレの時期でも金融引き締めを行わなかったため、他国が今後利下げを始めてもこれ以上の緩和の余地はあまりない。まさにそれこそが、ここ数週間にわたって円価格が下支えされていた理由であり、遠からず米ドル/円が今年新たな安値に到達売る可能性があると考えられる理由だ。
米ドル/円価格に影響しうる今週の主要データ
今週は消費者景況感や住宅市場データなど、米国のさまざまなイベントリスクがそろっている。しかし今週末、中央銀行が最も注目する可能性が高いのはコアPCEだ。先週のFOMCによる金利決定後、この先も利上げが続くのか、あるいは一旦停止となるのかを見極めるため、市場は今後のインフレデータを注視し続けるだろう。コアPCEはFRBがインフレ指標として最も重視することから、どんな形であれ予想に反する値が出れば市場は重く受け止めるはずだ。
公表日 |
時間 |
通貨 |
データ |
予想 |
前回 |
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火曜 |
3:00pm |
米ドル |
CB景況感 |
101.0 |
102.9 |
米ドル |
リッチモンド連銀製造業景況指数 |
-10 |
-16 |
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水曜 |
3:00pm |
米ドル |
中古住宅販売成約(前月比) |
-2.8% |
8.1% |
木曜 |
1:30pm |
米ドル |
最終GDP(前四半期比) |
2.7% |
2.7% |
米ドル |
失業保険申請件数 |
195,000人 |
191,000人 |
||
米ドル |
GDP価格指数(前四半期比) |
3.9% |
3.9% |
||
8:45pm |
米ドル |
イエレン財務長官の講演 |
|
|
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金曜 |
12:30am |
日本円 |
東京コアCPI(前年比) |
3.1% |
3.3% |
1:30pm |
米ドル |
コアPCE(前月比) |
0.4% |
0.6% |
|
2:45pm |
米ドル |
シカゴPMI |
43.6 |
43.6 |
|
3:00pm |
米ドル |
FOMCウォーラー委員の講演 |
|
|
|
米ドル |
ミシガン大学消費者信頼感修正値 |
63.4 |
63.4 |
黒田総裁の任期が今週終了
ところで、2013年の3月から日銀総裁を務めてきた黒田東彦氏の任期が今週末で終了し、植田和男氏が後任となる。日銀の金融政策の手法が変わる可能性を見越し、一部の投資家が円買いを始める可能性は否定できない。とはいえ市場オブザーバーの多くは、新しいリーダーのもとでの日銀の緩やかな政策正常化を見込んでいることから、今回の人事によるボラティリティは限定的なものにとどまると思われる。
米ドル/円のテクニカル分析
米ドル/円は急な下落を見せた後、心理的にキリの良い130.00円台からつねにわずかに回復を見せる。金曜にはこの水準を割り込んだが再度持ち直し、売り手がポジションを放棄したことからかろうじて値上がりが続いている。価格が持ち直したことで日足チャートでは同事線/ハンマーローソク足がみられた。値下がりから値上がりに転じたことを示すこのローソク足パターンは、強気筋に対して底値を打ったというある程度の自信をもたらすものだ。とはいえこの種の市場参加者は、確認のためにもう少し強気な値動きを見たいと考えるだろう。たしかにローソク足のパターン1つを強調しすぎない方がよい。高値も安値もともに低い水準にとどまっていることから、米ドル/円のトレンドは明らかに弱気相場だ。再度値下がりに転じる可能性があるため、レジスタンスゾーンを注視することが重要である。
こうしたゾーンのひとつが、過去に重要な位置を占めていた131.55円~132.30円付近、チャート上で影を付けたエリアだ。短期的な弱気相場のトレンドを保つには、弱気筋はこのエリアを防衛する必要がある。
一方日足ベースでは、米ドル/円が今日の安値である130.50円を割ると、金曜日の強気なローソク足を見て買いを入れた強気筋にとっては悩ましい展開だろう。もしそうなれば、次は金曜日の安値を下回るかどうかが弱気筋の注目ポイントになるはずだ
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