【本日の東京為替見通し】ドル円、下値を探る展開か ややハト派的なFOMC声明を受け
FOREX.com 2023/03/23 08:47 JST
【前日の為替概況】ドル円、131.01円まで下落 FOMCでの利上げ休止検討で
22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は131.44円と前営業日NY終値(132.51円)と比べて1円07銭程度のドル安水準だった。欧米の金融システム不安が後退する中、投資家のリスク志向が改善し円売り・ドル買いが先行した。アジア時間の高値132.78円を上抜けて、21時30分前には133.00円まで値を上げた。
ただ、注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果公表後は軟調な展開となった。米連邦準備理事会(FRB)は今日まで開いたFOMCで、市場予想通り0.25%の利上げを実施。声明では「インフレ目標達成のため、継続的な利上げが適切になると予想する」とした前回までの表現を削除し、「幾分かの追加引き締めが適切となる可能性がある」との文言を採用した。利上げが近くいったん停止される可能性があることが示唆されたことで、米金利の低下とともにドル売りが進んだ。さらに、パウエルFRB議長が会見で「利上げ休止を検討した」と明らかにするとドル売りが加速し、4時前に131.03円まで値を下げた。
パウエル議長が「当局者らは今年の利下げを見込んでいない」「必要なら想定以上の利上げを実施する」と発言すると、131.68円付近まで下げ幅を縮める場面もあったが、戻りは鈍かった。イエレン米財務長官が「預金保険の適用範囲について、大幅な拡大は検討していない」と述べたことで、ダウ平均が一時540ドル超下落。リスク回避の円買い・ドル売りが優勢となり、131.01円と日通し安値を更新した。
ユーロドルは5日続伸。終値は1.0856ドルと前営業日NY終値(1.0768ドル)と比べて0.0088ドル程度のユーロ高水準だった。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁などECB高官の発言を受けて、欧利上げ長期化観測が高まるとユーロ買いが進行。FOMCで「利上げ休止」が検討されたことが伝わると、全般ドル売りが活発化し一時1.0912ドルと2月3日以来の高値を付けた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.07と2月3日以来の低水準を付けた。
ただ、パウエル議長が「年内の利下げを基本シナリオとしていない」と述べ、量的引き締め(QT)についても「変更すべき兆候はない」と指摘するとドル買い戻しが進み、1.0853ドル付近まで伸び悩んだ。
ユーロ円は3営業日ぶりに小反落。終値は142.67円と前営業日NY終値(142.68円)と比べて1銭程度のユーロ安水準。21時過ぎに一時本日高値となる143.63円まで値を上げたものの、ドル円が失速するとユーロ円にも売りが出た。米国株相場が下落するとリスク・オフの円買いも入り、一時142.31円と本日安値を付けた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、下値を探る展開か ややハト派的なFOMC声明を受け
本日の東京外国為替市場のドル円は続落が予想される。FOMC声明から「継続的な引き上げ」という文言が削除され、利上げ休止が検討されたこと、イエレン米財務長官が破綻銀行の投資家保護を否定したことが材料視されそうだ。
FOMCでは、予想通りにFF金利誘導目標が0.25%引き上げられて4.75-5.00%となり、年内あと1回の0.25%の利上げが示唆され、年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)が5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)との見込みが示された。2024年の予測中央値は、前回12月の4.1%から4.3%へ引き上げられ、同年0.75%の利下げが示されている。
物価安定のための量的金融引締政策(毎月950億ドルの流動性の吸収)は継続された。しかしながら先週は、金融安定のために連銀窓口貸出(ディスカウント・ウインドウ)や「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」による流動性が供給されてバランスシートの縮小に歯止めがかかっており、整合性が取れていない。
2月の声明文での「継続的な引き上げが適切」が削除され、「幾分かの追加引き締めが適切」との文言が採用され、利上げが近くいったん停止される可能性が示唆された。パウエルFRB議長は会見で「利上げ休止を検討した」ことを明らかにしている。
16日の欧州中央銀行(ECB)理事会でも、0.50%の利上げが断行されたものの、今後の金利の軌道を示唆する「フォワードガイダンス」が削除されたており、FOMCでも同様の対応がなされたことになる。すなわちECBもFRBともに、金融システムの安定より物価安定に軸足を置きつつも、金融システム悪化によるデータ依存のアプローチに舵を切ったことになる。
ECBとFRBは、物価安定に関しては「インフレ高進は一時的」と楽観視して見誤り、FRBは昨年3月、ECBは昨年7月に漸く利上げを開始したばかりだ。金融安定に関する楽観的な見立てが正しいのか否か、懐疑的にならざるを得ない。
CME「フェドウオッチ」によると、23日の7時の時点で、5月と6月のFOMCでは据え置き確率が高いが、7月は利下げ確率が高まってきた。そして、年末のFF金利誘導目標は4.25-50%と示唆されている。
【フェドウオッチ】 【3月FOMCのドット・プロット】
・5月3日:4.75-5.00%(据え置き) 5.00-25%(+0.25%引き上げ)
・6月14日:4.75-5.00%(据え置き) 5.00-25%(据え置き)
・7月26日:4.50-75%(利下げ) 5.00-25%(据え置き)
・9月20日:4.50-75%(据え置き) 5.00-25%(据え置き)
・12月1日:4.50-75%(据え置き) 5.00-25%(据え置き)
・12月13日:4.25-50%(利下げ) 5.00-25%(据え置き)
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
特になし
<海外>
○14:00 ◎ 2月シンガポール消費者物価指数(CPI、予想:前年比6.4%)
○17:00 ◇ 1-3月期南アフリカ経済研究所(BER)消費者信頼感指数
○17:30 ☆ スイス国立銀行(中央銀行)、政策金利発表(予想:1.50%に引き上げ)
○17:30 ◎ 2月香港CPI(予想:前年同月比2.3%)
○17:40 ◎ ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁、講演
○18:00 ◎ ノルウェー中銀、政策金利発表(予想:3.00%に引き上げ)
○19:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○20:00 ◎ トルコ中銀、政策金利発表(予想:8.50%で据え置き)
○20:45 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演
○21:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:4.25%に引き上げ)
○21:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
○21:30 ◎ 10-12月期米経常収支(予想:2132億ドルの赤字)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:19.7万件/168.4万人)
○23:00 ☆ 2月米新築住宅販売件数(予想:前月比▲3.0%/65.0万件)
○24:00 ◎ 3月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲18.3)
○24:00 ◎ マン英MPC委員、講演
○24日00:30 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、イベントに参加
○24日01:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○欧州連合(EU)首脳会議(ブリュッセル、24日まで)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
22日09:02 鈴木財務相
「様々なリスク念頭に日銀・各国当局と連携」
「各国中銀の迅速な行動を歓迎=資金供給で」
「日本経済先行き、強い警戒感をもって注視」
22日14:10 ナーゲル独連銀総裁
「インフレとの闘いはまだ終わっていない」
「物価上昇圧力が強く、経済全体に広く及んでいることに間違いはない」
「2008年のような金融危機の再来に直面しているわけではない」
23日02:03
「インフレが予想通り進展すれば、さらなる利上げが必要」
22日17:51 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「インフレは依然として高水準であり、堅調に推移している」
「ECBはインフレ率を目標まで押し下げなければならないし、下げるつもり」
「最近の緊張が新たなダウンサイドリスクを追加」
「さらなる引き上げを約束しているわけでも、利上げを終えているわけでもない」
22日18:44 レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト
「基礎的なインフレ率は時間の経過とともに緩和していくだろう」
「インフレ率の低下は賃金の伸びが今年ピークに達することが前提」
22日22:35 レーン・フィンランド中銀総裁
「ECBは金融の安定よりも物価の安定を優先する」
23日02:04 イエレン米財務長官
「破綻銀行の投資家は政府の保護を受けない」
「米国の銀行システムは健全」
「預金保険の適用範囲について、大幅な拡大は検討していない」
23日03:05 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明
「最近の指標は支出と生産の緩やかな伸びを示している」
「雇用の増加はここ数カ月で回復し、堅調なペースで進んでいる。失業率は低いまま」
「インフレは引き続き高い」
「米銀行システムは健全で回復力がある」
「最近の展開により、家計や企業の信用状況が引き締まり、経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある。これらの影響の程度は不明」
「委員会はインフレのリスクを非常に注視している」
「委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す」
「これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを4.75-5.00%に引き上げることを決定した」
「委員会は今後の情報を注意深く監視し、金融政策への影響を評価する」
「委員会は、時間の経過とともにインフレ率を2%に戻すのに十分に制限的な金融政策姿勢を達成するため、いくぶん追加の引き締めが適切である可能性があると予想」
「目標範囲の将来の増加の程度を決定する際に、金融政策の累積的な引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」
「委員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担保証券の削減を続ける」
「委員会はインフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む」
「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する」
「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」
「委員会の評価は、労働市場の状況やインフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「今回の金融政策決定は全会一致」
23日03:35 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「FRB、財務省、FDICは以前に決定的な行動を取った」
「預金者の貯蓄は安全」
「孤立した銀行の問題は信頼を損なう可能性」
「銀行システムを安全に保つため、あらゆる手段を講じる用意」
23日03:35 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「少数の銀行で深刻な困難が浮上」
「インフレ率は長期目標の2%を大きく上回っている」
「労働需要が供給を大幅に上回っている」
「物価安定がなければ、経済は誰のためにもならない」
「賃金の伸びは緩和の兆候を示している」
「インフレは依然として高すぎ、労働市場は逼迫」
「銀行システムは健全で回復力がある」
「この2週間に銀行界で起きた事象は経済に影響する可能性」
「2%のインフレへの道は長くて険しい」
「利上げ休止を検討も、利上げ支持に強いコンセンサス」
「利上げの意思伝達は十分、多くの銀行は対応できる」
「データは金利上昇示唆したが銀行ストレスが相殺」
「監督と規制の強化を支持する計画」
「監督規制を強化する必要があることは明らか」
「現在、米国ではディスインフレが起こっている」
「FRB当局者らは今年の利下げを見込んでいない」
「信用状況の引き締まりは利上げの代わりになる可能性」
「必要なら想定以上の利上げを実施する」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=低下した転換線から昨日高値を抵抗帯に戻り売り>
陰線引け。雲の中で伸び悩み、転換線は基準線の下、遅行スパンは実線を下回っており、売りシグナルが優勢な展開となっている。孕み線で反落し、転換線を下回って引けているため続落の可能性が示唆されている。
本日は雲の下限131.49円を念頭に置き、132円後半まで低下した転換線から昨日高値133.00円を抵抗帯に戻り売りスタンスで臨みたい。
レジスタンス2 133.76(90日移動平均線)
レジスタンス1 132.83(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 131.44
サポート1 130.54(3/20安値)
サポート2 129.12(2/2高値)
<ユーロドル=1.07ドル前半で並ぶ転換線と基準線が支持>
陽線引け。転換線と基準線は同値だが、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けたことで買いシグナルが優勢な展開。5手連続陽線で底堅く推移し、転換線を上回って引けているため続伸の可能性が示唆されている。
本日は、1.07ドル前半ばで並ぶ転換線と基準線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.0940(2/3高値)
前日終値 1.0856
サポート1 1.0714(日足一目均衡表・転換線と基準線)
<ユーロ円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
小陰線(ほぼ寄引同事線)引け。雲の上は維持したものの、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回っているため、売りシグナルが優勢な展開。しかし、雲の上で孕み線で伸び悩んでいるものの転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。
本日は142円前半の基準線や雲の上限を念頭に、141.90円の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨みたい。
レジスタンス1 143.63(3/22高値)
前日終値 142.67
サポート1 141.90(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯中。抱き線で下落して転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 88.67(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 87.86
サポート1 87.14(3/20安値)
情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社
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