週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    米利上げサイクル終了の観測

    ◆ドル円、利上げ休止観測や金融システム不安が上値の重し

    FOMC メンバーの金利見通しに関する発言に注意

    ◆ユーロドル、ECB の利上げ期待根強い

    予想レンジ

    ドル円 127.00-133.00

    ユーロドル 1.0600-1.1100 ドル

    3 27 日週の展望

    ドル円は、米利上げサイクル終了観測や米銀をはじめとした金融システムに対する根強い警戒感から上値の重い展開が予想される。

    21-22 日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り 0.25%の利上げが決定されたが、追加利上げに関する声明文のフォワードガイダンスが下方修正されたほか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が記者会見で「利上げ休止を検討した」ことを明らかにするなど、「ハト派的な利上げ」となった。FOMC としては、次回 5 月会合で 0.25%利上げをし、その後は様子を見るとの姿勢を示したかったと思われるが、市場では利上げサイクルが終了し、「次回会合以降にも利下げが開始されるのでは」との思惑が一気に広がった。

    ここまで市場と米当局との認識の乖離が生まれた原因としては、やはりシリコンバレーバンクをはじめとした米銀行の破綻問題に対する懸念だろう。米政府による預金全額保護などの早急な対応により、一時の警戒感は緩和されたかに見えたが、イエレン米財務長官が議会証言で「保険対象を全預金に拡大することや、現在の保護金額上限引き上げを検討したり議論したことはない」と述べたことで不安が再燃した。

    米利上げ休止観測の高まりと金融システムに対する懸念が広がるなかで、来週も積極的にドルを買っていく状況になるとは考えづらい。ただ、FOMC メンバーによる金利見通しに関する発言次第では再び利上げ期待が高まる可能性があることには注意しておきたい。経済指標に関しては、週末 31 日に発表される 2 月米 PCE コアデフレーターに注目している。

    ユーロドルは、米利上げ期待が急速に後退する一方で、欧州中央銀行(ECB)の利上げ期待が根強いことから下値の堅い動きとなるか。ラガルド ECB 総裁は今後の利上げについて言及することを避けたが、ナーゲル独連銀総裁やクノット・オランダ中銀総裁からは今後の利上げに対する積極的な姿勢が示された。いずれも今後のデータ次第ということを強調していることからも 30 日の独、31 日のユーロ圏消費者物価指数・速報値には注目が集まりそうだ。なお、欧州は来週から夏時間に移行するため、経済指標の発表や株式市場の開始などは 1 時間早くなる。

    3 20 日週の回顧

    ドル円は UBS グループによるクレディ・スイス(CS)買収を受けて 132.65 円まで買いが先行したが、CS の AT1 債を当局が無価値化したことが市場の混乱を招き、米・中長期金利の急低下とともに 130.54 円まで失速。ECB などが「最初に株式で損失を吸収した後にのみ、AT1 債の評価減が求められる」との声明を発表すると一転 133.00 円まで反発した。ただ、FOMC 声明がハト派的だったほか、イエレン米財務長官の発言を受けて急落。一時 130.32 円まで下落した。

    ユーロドルは欧利上げ期待や米利上げ期待後退から総じて底堅く、一時 1.0930 ドルまで上昇した。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    RBA、利上げ休止を示唆

    ◆豪ドル、2 CPI を受けた反応に注意

    NZ、金利先高観では有利な状況

    ◆南ア、SARB は利上げ局面終了を示すか

    予想レンジ

    豪ドル円 86.00-91.00

    南ア・ランド円 6.90-7.45

    3 27 日週の展望

    豪ドルは神経質な展開となりそうだ。3 月分の豪準備銀行(RBA)金融政策決定会合議事要旨では「次回会合で利上げ休止について再検討する」などの見解が示された。短期金融市場ではすでに利上げ局面の休止と 7 月会合での利下げ転換を織り込み始めており、金利先高観は急速に後退している。

    また、米国でも利上げ期待は後退。21-22 日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場予想通りに 0.25%の利上げが決定されたものの、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「利上げ休止を検討した」ことを明らかにした。また、声明文でも利上げが近くいったん停止される可能性があることが示唆されている。

    豪・米金融当局がともに利上げ休止を示唆していることで、両国間の金融政策の方向性には焦点が当てづらくなった。豪ドルも対ドルでは 7 日の RBA 金融政策決定会合を受けた下げ幅をほぼ取り戻しているが、一方で対円では売り基調が続いている。金融不安も完全に解消されたとは言えず、豪ドルの買い材料が多いわけではない点には注意が必要だ。

    豪州からは来週、28 日に 2 月小売売上高、29 日に 2 月消費者物価指数(CPI)が発表予定。特に CPI は結果を受けた反応も大きくなることが予想される。RBA の金融政策の方向性にも影響を与えるため注目しておきたい。

    隣国 NZ からは 30 日に 2 月住宅建設許可件数や 3 ANZ 企業信頼感などが発表される。4 5日には NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策も予定されているが、RBNZ は利上げ継続が基本路線。短期金融市場では 5 月以降の追加利上げもある程度織り込んでおり、金利先高観という点では有利な状況にある。NZ ドルは相対的に底堅い動きとなりそうだ。

    南アフリカ・ランド(ZAR)も神経質な展開か。最大の注目は 30 日に予定されている南アフリカ準備銀行(SARB)の金融政策。市場では 25bp の利上げ(7.25%から 7.50%)が実施され、今回で SARB の利上げ局面は終了すると想定している。深刻な電力不足などで景気低迷に陥っている同国では、利上げ終了がポジティブ要因として捉えられる可能性もあるだろう。声明文などから今後の金融政策の方向性を確認しておきたい。

    3 20 日週の回顧

    豪ドルは下値の堅い動き。3 月分の RBA 議事要旨を受けて 21 日に売りが進む場面があったが、その後は下げ渋る展開に。金融システム不安の後退で投資家のリスク志向が改善し、豪ドルには買い戻しが入った。

    ZAR も下値が堅かった。週初こそ売りに押されたが、22 日の FOMC 公表後は対ドルを中心に買い戻しの動きが進んだ。対円でも 20 日に年初来安値を更新した後は下値を切り上げる展開となり、売りも一服した。(了)

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    加ドル、インフレ減速を見極め

    ◆ポンド、金融政策の不透明感強まるなか神経質

    ◆予想外の英インフレ加速が不安要素

    ◆加ドル、インフレ減速の影響を見極め

    予想レンジ

    ポンド円 158.00-165.00

    加ドル円 93.50-97.50

    3 27 日週の展望

    ポンドは、英金融政策の先行き不透明感が強まるなか、神経質な動きが続きそうだ。英中銀金融政策委員会(MPC)は 23 日、市場予想通り政策金利を 4.00%から 4.25%に引き上げた。2021年 12 月から始まった利上げ実施は 11 会合連続。ただ、このところ大幅な金利引き上げが続いていたが、今回は 6 会合ぶりに通常の変更幅 0.25%に戻した。議事要旨では、「インフレ持続の兆しがあればさらなる利上げが必要」との見解が示された一方、「4-6 月期に CPI は大幅に低下する」との見方も明らかに。2 月に出した金融政策レポートの見通しよりも低い水準になるとしている。

    しかしながら、そのインフレはピークアウトが後ずれする可能性が出てきた。22 日発表の 2 英 CPI は前年比 10.4%上昇と市場予想や前回値を上回った。一部では昨年 8 月以来の 10%割れも期待されていたが、逆に 4 カ月ぶりに前回からの加速となってしまった。英中銀は 23 年末の CPIを 4.25%、予算責任局(OBR)にいたっては 2.9%まで低下すると予測している。議事要旨でインフレ急低下が見込まれている第 2 四半期はまだ先ではあるが、足もとの物価上昇率が想定以上に高いことは英中銀の政策運営を難しくしてしまっている。

    加ドルは、インフレ減速の影響をしばらく見極めることになる。21 日に発表された 2 CPI 前年比 5.2%上昇と予想伸び率 5.4%からも下振れただけでなく、1 年 1 カ月ぶりの低水準まで減速した。カナダ中銀(BOC)が金融政策を決定するうえで注視する CPI トリムも 4.8%上昇と 11カ月ぶりの 5%割れを記録。順調なインフレ鈍化のように見えるが、統計局によれば、大幅な物価上昇だった昨年 2 月との基準年効果が主な要因としている。実際に食料品価格は前年比 9.7%増、そのうち家庭用に絞ると 10%以上の上昇率。一方で住宅関連の価格上昇は低下基調と、市場の冷え込みを示している。加経済全体を見渡すと、決してインフレ動向は手放しで喜べない。

    2 CPI の結果を受けて、来月の中銀会合では「2 会合連続の政策金利据え置き」との見方がかなり有力。また米金利先安観も影響し、短期金融市場では BOC が今夏にも利下げに踏み切ることを織り込み始めた。今後は BOC が実際にいつ緩和に舵を切るかが注目となる。暫くは金融政策への思惑で加ドルは上下することになるだろう。

    3 20 日週の回顧

    ポンド円は荒い動きが続いた。スイス金融再編への警戒感から売りが先行し、159 円割れまで売られた。もっとも、その後は日米欧の 6 中銀によるドル供給強化が好感され、リスク回避の巻き戻しが進んだ。英 CPI にも買いで反応し、163 円台まで反発した。ただ金融不安が再び強まると 160 円台まで上値を切り下げている。加ドル円も売り優勢で始まったが、95 円の手前で下げ止まると週半ばには 97 円前半まで切り返した。金融リスクへの過度な警戒感が後退したほか、原油相場が持ち直したことも加ドルの支えとなった。しかし週後半は再び 95 円割れまで売りに押されている。米金利先安観を背景に、ポンドや加ドルは対ドルでは底堅い動きとなった。(了)


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