今週の見通し:FRBが重視するインフレ率データが公表予定

先週は3か国の主要中央銀行がそろって合計125bpの利上げを実施した。FOMC、イングランド銀行(BoE)、スイス国立銀行(SNB)の利上げは確実にこれで最後ではないにせよ、各国とも以前に比べればターミナル・レートにかなり近づいたといえる。もちろん、最近の市場の荒れ模様や銀行セクター崩壊の懸念によって、利上げの終了を望む声はますます高まっている。しかしインフレはそれを許すだろうか?FOMCもトレーダーも金曜に発表されるコアPCEの数値を注視している。SNBが注目するスイスのインフレデータも金曜に発表予定だ。さらにBoE総裁がロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演を予定しており、トレーダーたちはこの機会に英国の金利がターミナル・レートに達したという発言が出ることを期待している。今週後半にかけては、悪名高い空売り投機筋とヒンデンブルク・リサーチ、そしてジャック・ドーシーが設立した決済サービス企業ブロックのいざこざの行方にも注目が集まるだろう。さらに余力があれば、銀行破綻や金融ストレスの兆候にも注意を払おう。皆さんの幸運を祈る。

 

 

先週の状況:

  • UBSが政府支援を受けクレディ・スイスの買収に合意、SNBは流動性支援融資を予定
  • 銀行株はボラティリティの高い1週間に。米国のジャネット・イエレン財務長官が銀行預金に対する「全面的な保険」の導入を検討していないと発言したことで、週前半の値上がりから一転して下落
  • FOMCは全会一致で25bpの利上げを実施し、政策金利は5%に。ジェローム・パウエル議長の今年の利上げについての発言は依然煮え切らず、金融市場との兼ね合いの検討を示唆
  • SNB50bpの利上げを実施して政策金利を1.5%に。インフレが12月から続いていることから、ヨルダン総裁は今後の利上げの可能性を否定せず
  • BOE再度の高インフレの報告を受け賛成7、反対225bpの利上げを実施し、政策金利は4.25%に。.金融市場は最後の25bpの利上げを見込んでいるものの、エコノミストは次の会合では金利は据え置かれると見ている。
  • ジャック・ドーシーが創業した決済サービス企業ブロック(SQ)株価は昨日、およそ-22%の大幅な下落を記録した。ヒンデンブルク・リサーチが同株の空売りポジションを取っていると明らかにしたうえで、ブロック社の「詐欺的な取引」を糾弾する痛烈なレポートを発表したためだ。
  • 日本のサービス業購買担当者景気指数(PMI)はここ10年で最高を記録した一方、小売業のインフレ率は0.9ポイントという素晴らしい下落を見せ前年比3.1%となった。
  • オーストラリアのPMIデータは悪化に転じており、製造業、サービス業、複合PMIはいずれも縮小しつつある。この状況ではRBA4月に利上げをしようとは思わないだろう。
  • RBAの報告書は、政策委員会が利上げの停止を議論したことを認めており、これは先のロウ総裁のコメントを裏付けるものだ。

 

市場変動の要因(アジア地域金曜、本稿時点):

  • 金属はドル安の恩恵をいち早く受け、銅は本稿執筆時点で世界全体の5.6%以上上昇
  • 金は日足で2,000ドル超えを2回ためしている、資金避難先としての魅力とドル安から、2,000ドル超えは時間の問題
  • ナスダック銀行指数は11月の2020年まで下落し、過去3週間で-27%、今年の最高値から44ドルの下落

注意:週ごとの動きとチャートは金曜のニューヨーク市場閉場後に変化する可能性があります

 

今週の見通し(カレンダー):

327日(月曜)

  • 米国:ダラス連銀製造業景況指数、フィリップ・N・ジェファーソン理事講演「Implementation and Transmission of Monetary Policy(金融政策の導入とギアチェンジ)」
  • EU:ドイツIFO
  • 英国:BoEアンドリュー・ベイリー総裁:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの講演
  • 中国:工業部門企業利益
  • 日本:企業向けサービス価格指数、金融経済統計月報
  • オーストリア:ユニクレジット銀行オーストリア製造業PMI

328日(火曜)

  • 米国:住宅価格指数、リッチモンド連銀製造業指数、FOMCバー委員が米国上院の銀行、住宅、都市問題委員会で証言
  • カナダ:新規開業件数・閉業件数月間見積もり、世帯支出実測最終値
  • EU:ドイツ消費者景況感
  • 英国:BoEアンドリュー・ベイリー総裁、サム・ウッズ、デイブ・ラムズデンシリコンバレー銀行について財務省特別委員会で証言
  • スイス:ZEW景気期待指数
  • 日本:基調的なインフレ率を捕捉するための指標
  • オーストラリア:小売業

329日(水曜)

  • 米国:住宅ローン申請数、住宅販売件数、原油在庫、カンファレンス・ボード消費者景況感、FOMCバー委員が米国下院金融サービス委員会で証言
  • カナダ:講演:トニー・グラベル副総裁「The market liquidity measures we took during COVID(新型コロナウイルス感染症流行下で実施した市場流動性対策)」
  • 英国:BOEシステマティック・リスク調査結果公表
  • スイス:SNB四半期報告書
  • オーストラリア:月次CPI

330日(木曜)

  • 米国:4四半期GDP(最終値)
  • カナダ:就業者数/給与と労働時間/有効求人数
  • EU:インフレ速報値(ドイツ、スペイン)、EU景況感指数(ESI)
  • オーストラリア:有効求人率
  • ニュージーランド:景況感

331日(金曜日)

  • 米国:コアPCE、講演-- クリストファー・J・ウォーラー理事「The Unstable Phillips Curve(不安定なフィリップス曲線)」、ミシガン大学消費者信頼感指数
  • カナダ:月次GDP
  • EU: EU失業者数、ユーロ圏インフレ率予測速報値、インフレ率(フランス、イタリア)、ドイツ小売業および労働力レポート
  • 英国:4四半期GDP、第4四半期国際収支、第4四半期設備投資
  • スイス:消費者物価指数、小売業離職率
  • 日本:東京CPI
  • オーストラリア:オーストラリア準備銀行(RBA)準備資産報告

 

今週の見通し(主なイベント):

BoEベイリー総裁、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演予定(英国夏時間木曜午後6時)

BoE25bpの利上げを実施したが、次回も25bpの利上げがあるのか、それとも据え置きとなるのかについては、金融市場とエコノミストたちの意見が割れている。一方では、英国の驚くべきインフレ進行から金融市場は利上げを織り込むのが適切であるかもしれないが、BoEのマン委員を信じるなら、BoEはこの厳しい水準のインフレが急速に収束することを期待している。正直なところ私自身、前回の会合での反対票は2票よりは多いだろうと見ていた(実際には72で利上げへの賛成が決まった)し、BoEの次の会合が5月とやや先であることから、利上げと据え置きのどちらに転んでも不思議はない。そしてベイリー総裁も同様の発言をし、金利が4.25%にとどまるか4.5%に上昇するかの決め手となるのは今後のデータ次第であると強調して、合わせて英ポンド価格を誘導するのではないかと思われる。

 

オーストラリアCPI(英国夏時間午前2時半/オーストラリア東部夏時間午前11時半)

オーストラリアのインフレ率は他国に比べると比較的上昇が遅く、またピークに達するのも遅い(仮にピークであればだが)。前年比では先月8.1%から7.2%に下落していることから(-0.9%の下落となる)、ピークアウトしたと考えても良さそうだ。RBAの金利先物は95%の確率で金利据え置きを示唆しており、RBA議事録はロウ総裁の利上げ停止のコメントを裏付けるものだった。水曜日のインフレ報告で厄介な上昇が見られない限りは、利上げの一時停止が最も可能性の高いシナリオと考えられる。

 

米国インフレ率 - コアPCE(英国夏時間金曜午後1時半)

金曜日にはFRBが重視するインフレ指標が発表され、多くの注目を集めると予想される。市場は軟調な小売売上高と前年比のインフレ率を25bpの利上げの確実な兆候と見る一方で、ジェローム・パウエル総裁が最近のFOMCでその考えを明確に否定したにもかかわらず、FRBが今年数回利下げを行うとの見方を続けている。しかし、歴史は繰り返すかもしれない。2月の会合でも同じような結果になったのだ。市場が利下げを織り込み、FRBメンバーはタカ派的なメッセージを全面的に押し出したにもかかわらず、強力なNFPがメッセージの前提を打ち砕き、市場はFRBを信じた。来週のPCEレポートが予想を上回ったらどうなるだろうか。まずは利下げの確率が下がると思われ、ドルはようやく値上がりを始めるだろう。一方インフレ率が軟調に推移すれば、ドルは値下がりし、利下げへの市場の期待が正当化される可能性が高い。


 

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