
【前日の為替概況】ユーロドル 1.1000ドルまで上昇、米CPIやECB高官発言を受け
12日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは続伸。終値は1.0992ドルと前営業日NY終値(1.0912ドル)と比べて0.0080ドル程度のユーロ高水準だった。3月米消費者物価指数(CPI)が前月比0.1%/前年比5.0%と予想の前月比0.2%/前年比5.2%を下回ったことが伝わると、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利上げを停止するとの見方が広がり全般ドル売りが先行。欧州中央銀行(ECB)高官の発言を受けて、欧利上げ長期化観測が高まったことも相場の支援材料となり、一時1.1000ドルと2月2日以来の高値を更新した。
デギンドスECB副総裁はイベントで「基調インフレは予想以上に堅調」と述べ、インフレ率を目標の2%へと押し下げるECBの決意を改めて示したほか、ホルツマン・オーストリア中銀総裁はインタビューで「高止まりしているインフレが5月の理事会での0.50%利上げを正当化する」などと語った。
ドル円は5営業日ぶりに反落。終値は133.13円と前営業日NY終値(133.68円)と比べて55銭程度のドル安水準だった。3月米CPI総合が予想を下回ったことをきっかけに円買い・ドル売りが先行。前日の安値132.97円を下抜けて一時132.74円まで値を下げた。
ただ、エネルギーと食品を除くコア指数が市場予想通りの結果となったことから、一本調子で下落する展開にはならなかった。米10年債利回りが上昇に転じると買い戻しが優勢となり、133.40円付近まで下値を切り上げた。もっとも、米10年債利回りが再び低下するとドル円の上値も重くなっている。
米連邦準備理事会(FRB)がこの日公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(3月21-22日分)では「米銀の経営破綻で広範な金融ストレスが引き起こされないと明確になるまで利上げを一時停止することが検討されたものの、最終的にはインフレ対応を優先すると結論付けた」ことが明らかになった。また、「多くの当局者がピーク金利の見通しを引き下げた」「スタッフは今年中に穏やかなリセッションを予測」などと伝わった。
ユーロ円は5日続伸。終値は146.34円と前営業日NY終値(145.89円)と比べて45銭程度のユーロ高水準。米CPIの下振れでドル円が下落するとユーロ円にも売りが波及し一時145.79円付近まで下押ししたものの、アジア時間に付けた日通し安値145.77円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。ECB高官らのタカ派的な発言を受けてユーロ買いが強まると、一時146.67円と昨年12月15日以来約4カ月ぶりの高値を更新した。
米ドルカナダドルは軟調だった。米CPIの下振れをきっかけに米ドル売り・カナダドル買いが進行。WTI原油先物価格が約5カ月ぶりの高値を付けると産油国通貨とされるカナダドルの買いを後押しして、一時1.3428カナダドルまで値を下げた。
なお、カナダ銀行(BOC)は、市場予想通り政策金利を現行の4.50%で据え置くことを決めたと発表。声明では「CPIは今年半ばに3%程度に急速に減速し、その後は徐々に低下して2024年末までに目標の2%に達すると予想する」と指摘した。同時に「必要があれば利上げを実施する用意がある」と表明した。
【本日の東京為替見通し】ドル円 米CPI総合の鈍化で上値重いか、豪ドルは豪雇用統計に注目
本日の東京外国為替市場のドル円は、3月米消費者物価指数(CPI)総合の伸び率鈍化を背景に、日足一目均衡表・雲の中(132.57円~134.79円)の中で上値が重い展開が予想される。
3月米CPI総合は前年比+5.0%へ伸び率が鈍化したものの、コアCPIが前年比+5.6%へ加速していた。もっとも結果を受けても、米金融政策への織り込み度に大きな変化はなかった。CME「フェドウオッチ」では、5月2-3日FOMCで0.25%追加利上げ確率は65%程度。しかしながら、12月FOMCでは4.25-50%へ引き下げとの見方が今のところ有力であり、3月FOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)の5.00-25%との乖離がドル売り要因となっている。
5月FOMCについては、ドット・プロットとフェドウオッチの予想ともにFF金利誘導目標の下限が5.00%としていることで、インフレ率とFF金利が5.0%付近で一致する可能性が高まった。また、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCE総合価格指数は、2月の数字であるものの前年比+5.0%に低下。すなわち、インフレ率と政策金利の差である実質FF金利がゼロの状態で、利上げサイクル終了となる可能性が高まりつつある。こちらもドルの上値を抑える要因となっている。
さらに、米10年債利回りが同2年債利回りを下回り、3.9%台の2年債利回りもFF金利誘導目標を下回る「長短金利逆転(逆イールド)」の状態が続いている。これは2024年のリセッション(景気後退)入りの可能性を示唆している。
10時30分に発表される3月豪雇用統計の予想は失業率が3.6%、新規雇用者数はが2万人増とどちらも前月からの悪化が見込まれている。4日の豪準備銀行(RBA)理事会では、金融引き締めから据え置きへと転じた。RBAは決定理由として「利上げの効果がまだ十分に現れていないことで、これまでの金利上昇の影響と経済見通しを評価するための追加的な時間を提供するため据え置いた」と表明した。3月雇用統計が予想通りだった場合は、労働市場の緩和により、5月2日RBA理事会での2会合連続据え置き観測が高まるのかもしれない。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 3月マネーストックM2
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
<海外>
○08:01 ◇ 3月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲48)
○10:30 ◎ 3月豪雇用統計(予想:失業率3.6%/新規雇用者数2.00万人)
○未定 ◎ 3月中国貿易収支(予想:392.0億ドルの黒字)
○15:00 ◎ 3月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.8%/前年比7.4%)
○15:00 ☆ 2月英国内総生産(GDP、予想:前月比0.1%)
○15:00 ◎ 2月英鉱工業生産(予想:前月比0.2%/前年比▲3.7%)
○15:00 ◎ 2月英製造業生産高(予想:前月比0.2%)
○15:00 ◇ 2月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:170.00億ポンドの赤字/49億ポンドの赤字)
○18:00 ◎ 2月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比1.0%/前年比1.5%)
○20:45 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.2万件/181.4万人)
○21:30 ◎ 3月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比横ばい/前年比3.0%)
◎ 食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比0.3%/前年比3.4%)
○22:00 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演
○14日02:00 ◎ 米財務省、30年債入札
○20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン、最終日)
○国際通貨基金(IMF)・世界銀行春季会合(ワシントン、16日まで)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
12日06:29 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「ユーロ圏はインフレ定着のリスクに直面している」
「利上げの効果は数カ月後に増幅するだろう」
13日03:30
「インフレはより広範囲になっている」
「インフレは潜在的により持続的になっている」
「ECBは次回会合で金利をさらに引き上げる可能性がある」
「ECBが5月に利上げするかどうかを決定するのは時期尚早」
「ECBは利上げの過程をすでにほぼ完了している」
12日07:09 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁
「さらなる行動が必要かはデータを注視して判断」
「すでにFRBの動きが機能している兆候が見られる」
「金融政策の効果を実感するには18カ月かかる」
12日08:57 国際通貨基金(IMF)
「日銀のYCC変更、為替・ソブリン債タームプレミアム・世界のリスクプレミアムの3点で国際金融市場に影響及ぼす可能性」
「日銀のYCC、さらに柔軟性持たせれば後の急激な政策変更阻止に寄与する可能性」
12日09:08 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁
「インフレ見通しについては債券市場ほど楽観的ではない」
「2%のインフレ目標は変更すべきではない」
12日15:21 植田日銀総裁(内田副総裁が代読)
「賃金上昇伴う形で物価目標を持続的・安定的に実現できるよう金融緩和を継続していく」
「物価上昇率のプラス幅、今年度半ばにかけて縮小していく」
「日本経済、コロナ禍で落ち込んだが現在は持ち直している」
「今後も緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、日本経済は回復続ける」
12日16:40 コテキ・ポーランド中銀金融政策審議委員
「0.25%の利上げが必要と見込む」
12日17:51 米ホワイトハウス
「バイデン米大統領が英国と自由貿易協定について議論すると期待しない」
12日21:34 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁
「基調インフレは予想以上に堅調 」
12日23:11 ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「インフレ見通しは5月にさらに0.50%の利上げを示唆」
「ECBは5月以降も大幅に利上げを続ける必要がある」
「ECBは7月から量的引き締め(QT)を加速できる可能性」
12日23:04 カナダ銀行(BOC、カナダ中央銀行)声明
「多くの国ではエネルギー価格の下落、グローバルサプライチェーンの正常化、金融政策の引き締めで、インフレが緩和」
「同時に、労働市場は依然として逼迫しており、多くの先進国におけるコアインフレはサービスの物価圧力が持続していることを示唆」
「世界経済の成長は、予想以上に力強いものだった」
「米国と欧州の成長率は上向きで驚くべきもの」
「ただ、金融引き締め政策がこれらの経済に浸透し続けているため、成長は鈍化すると予想」
「中国経済は特にサービス業が回復」
「全体として、コモディティ価格は1月の水準に近づいている」
「カナダでは需要が依然として供給を上回っており、労働市場は引き続き逼迫」
「CPIインフレ率は2月に5.2%に低下し、中銀が注視するコアインフレ率は5%弱だった」
「CPIインフレ率は今年半ばに約3%まで急速に低下し、その後2024年末までに目標の2%まで徐々に低下すると予想」
「金融政策を決定する際、理事会はCPIインフレ率が目標に戻るかどうかを判断するために、これらの指標とコアインフレ率の推移に特に焦点を当てる」
「成長とインフレ見通しを考慮して、政策金利を維持することを決定」
「量的引き締めは、この制限的なスタンスを補完し続けている」
「理事会は経済発展と過去の利上げの影響を引き続き評価し、インフレ率を2%の目標に戻すために必要なら、政策金利をさらに引き上げる用意がある」
「物価安定を回復するという確固たる決意を維持している」
12日23:37 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「コアインフレ抑制のためにやるべきことはまだある」
「インフレのピークは過ぎたが、まだ先はある」
13日00:17 マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁
「カナダ経済は依然として過剰な需要」
「金利をより長く制限的な水準で維持する必要があるかどうか検討」
「BOCは上振れリスクを引き続き懸念」
13日01:15 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「FRBは利上げに関してさらにやるべきことがある」
「米経済の力強さとインフレ率の上昇は、利上げに向けたさらなる取り組みを示唆」
「追加利上げがなくても経済が減速し続ける可能性」
「米経済は引き続き堅調、労働市場は極めて逼迫」
「2%のインフレ目標にコミットし、断固たる姿勢を維持」
13日03:05 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
「幾人かの当局者が政策の柔軟性が必要と主張」
「多くの当局者がピーク金利の見通しを引き下げた」
「3月会合では0.25%の利上げを全員が支持」
「何人かの当局者は金利を据え置くことが適切かどうかを検討した」
「何人かの当局者は賃金の伸びは依然として2%のインフレ目標と一致する率をはるかに上回っていると指摘」
「当局者は労働需要が供給を大幅に上回っていると認識」
「インフレリスクはより高く傾いている」
「スタッフは今年中に穏やかなリセッションを予測」
13日04:34 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「安定性の問題が発生した場合、量的引き締め(QT)を停止する」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=雲の中で伸び悩み、転換線は支持となるか>
陰線引け。日足一目・雲の中で伸び悩み、転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、売りシグナルが優勢な展開が続いている。しかし、4手連続陽線の後の抱き線で反落したものの転換線を上回って引けているため反発の可能性が示唆されている。
本日は132円半ばの雲の下限から132円前半の転換線を支持帯に押し目買いスタンスで臨みたい。転換線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 134.79(日足一目均衡表・雲の上限)
レジスタンス1 134.05(4/12高値)
前日終値 133.13
サポート1 132.35(日足一目均衡表・転換線)
サポート2 131.53(4/7安値)
<ユーロドル=転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。2手連続陽線で転換線を上回って引けているため続伸の可能性が示唆されている。
本日は1.0890ドル台まで上昇した転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 1.1033(2/2高値)
前日終値 1.0992
サポート1 1.0894(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=5日続伸、4/12安値を支持に押し目買い>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯している。5手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は12日安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 147.10(2022/11/9高値)
前日終値 146.34
サポート1 145.77(4/12安値)
<豪ドル円=転換線を念頭に置いた取引、上値余地を試すか>
陽線引け。転換線は基準線を上回っているものの、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けているため売りシグナルが優勢な展開。しかし、4手連続陽線で転換線を上回って引けており、上値余地を試す展開が予想される。
本日は転換線88.88円を念頭に置き、基準線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス1 90.17(4/4高値)
前日終値 89.13
サポート1 88.31(日足一目均衡表・基準線)
情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社
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