
【前日の為替概況】ドル円、小反発 米長期金利が上昇に転じ相場を下支え
29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は小反発。終値は149.37円と前営業日NY終値(149.31円)と比べて6銭程度のドル高水準だった。日本時間夕刻に一時148.53円と日通し安値を付けたものの、売り一巡後は買い戻しが優勢となった。一目均衡表・転換線が位置する148.52円がサポートとして意識されたほか、一時は4.50%台まで低下した米10年債利回りが上昇に転じたことなどが相場を下支えした。日米金融政策の方向性の違いから押し目買い意欲も旺盛で、3時前には149.49円付近まで持ち直し、アジア時間に付けた日通し高値149.50円に迫った。
なお、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を判断するうえで重視している8月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)で変動が激しい食品とエネルギーを除くコアデフレーターは前年比3.9%上昇と市場予想通り前月から鈍化したものの、相場の反応は限られた。
ユーロドルは小幅ながら続伸。終値は1.0573ドルと前営業日NY終値(1.0566ドル)と比べて0.0007ドル程度のユーロ高水準だった。欧州時間発表の9月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が総合・コアともに予想を下回ったことを受けて、欧州中央銀行(ECB)が追加利上げに傾くとの観測が後退するとユーロ売りが出た。米長期金利が上昇に転じたことも相場の重しとなり、一時1.0564ドル付近まで下押しした。なお、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁はこの日、「政策金利はピークまたはそれに近い水準にある」と述べ、FRBの利上げは完了した可能性があると示唆したものの、「FRBの政策が経済とインフレに影響を与えるには時間がかかるだろう」「しばらくは制限的な政策が必要になると予想」と述べ、しばらくは高金利を維持する姿勢を示した。
ユーロ円は続伸。終値は157.95円と前営業日NY終値(157.76円)と比べて19銭程度のユーロ高水準。日本時間夕刻に一時158.34円と日通し高値を付けたものの、そのあとはドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に受けたため、大きな方向感は出なかった。NY市場では158.00円を挟んだ狭いレンジ取引に終始した。
【本日の東京為替見通し】つなぎ予算可決後の米金利動向に要注目、中間決算終わり介入も?
早朝のドル円は、週末30日に米上下両院で「つなぎ予算」が可決されたことを受け、政府機関の一部閉鎖も回避されたことで、ドル買いが優勢となり、先週末の高値を上抜けている。もっとも、この後は時間外の米債市場動向を確かめる必要がありそうだ。
「つなぎ予算」の可決により、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが警告を発していた、米国の信用格付けの引き下げなどが回避されたことはドル買いの要因になる。一方で、政府機関の閉鎖が現実味を帯びていたことで、売っていた米債(利回り上昇)の巻き戻しにより、米金利低下のドル売りに反応する可能性もある。本日のドル円はこの両面をにらみながらの展開になると予想される。
政府機関の閉鎖回避は米国からの良いニュースではあったが、週末は悪いニュースも流れている。29日に行われた全米自動車労働組合(UAW)と自動車大手との交渉は合意には至らなかったことで、今月15日から行われているストライキは継続され、更に新たに約7000人がストライキに参加することになった。8月はストライキで約410万時間の労働時間が失われたが、ある試算ではストライキの長期化、拡大化となれば、四半期GDPが1.7%下がる可能性があるとされている。これまで独り勝ちだった米国市場が、ストライキの影響が深刻化した場合は「より高く、より長く」という米金融政策のシナリオに変化が生じることもあり警戒したい。
為替介入については、一部では先月末までは企業の中間期決算があったことで、大幅な為替の変動は混乱を招くため、介入を手控えたとの声があった。ドルが全面高という流れではあるものの、NZドル円は2015年以来、カナダドル円は2008年以来の円安水準を更新するなど、円の弱さは際立っている。ドル円も150円という節目の水準に接近していることもあり、依然として為替介入の警戒感は高い。なお、本日は日銀・企業短期経済観測調査(短観)が発表される。かつては本邦の経済指標等の中では最も相場を動意づかせたものだったが、ここ最近は短観で市場が反応することは少なくなっている。しかしながら、短観で発表される「事業計画の想定為替レート」には注目したい。6月調査では全規模・全産業の2023年度はドル円が132.43円、ユ-ロ円は140.11円だった。また、大規模・製造業はそれぞれ131.55円、139.02円だった。
本邦以外のオセアニア・アジアからは、本日は主だった経済指標などの発表予定はない。ただし、本日から中国市場は週末まで国慶節休場、香港市場も国慶節の翌日で本日は休場となっている。市場流動性が悪い中で、些細なニュースなどでも大きな動きをする可能性があることには要警戒となる。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ☆ 日銀・企業短期経済観測調査(短観、9月調査)
☆ 大企業製造業の業況判断指数(DI、予想:6)
◎ 大企業非製造業の業況判断指数(DI、予想:24)
◎ 大企業製造業DI・12月見込み(予想:6)
◎ 大企業非製造業DI・12月見込み(予想:23)
◎ 大企業全産業設備投資計画(前年度比、予想:13.5%)
○08:50 ◇ 日銀金融政策決定会合における主な意見(9月21-22日分)
<海外>
○15:00 ◇ 9月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.4%)
○15:30 ◇ 8月スイス小売売上高
○16:00 ◇ 9月トルコ製造業購買担当者景気指数(PMI)
○16:30 ◇ 9月スイス製造業PMI(予想:40.5)
○16:50 ◎ 9月仏製造業PMI改定値(予想:43.6)
○16:55 ◎ 9月独製造業PMI改定値(予想:39.8)
○17:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、デコス・スペイン中銀総裁、講演
○17:00 ◎ 9月ユーロ圏製造業PMI改定値(予想:43.4)
○17:30 ◎ 9月英製造業PMI改定値(予想:44.2)
○18:00 ◎ 8月ユーロ圏失業率(予想:6.4%)
○22:45 ◎ 9月米製造業PMI改定値(予想:48.9)
○23:00 ☆ 9月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:47.7)
○23:00 ◇ 8月米建設支出(予想:前月比0.6%)
○24:00 ◇ 9月メキシコ製造業PMI
○24:00 ◎ マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○24:00 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、討議に参加
○3日02:30 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加
○3日03:00 ◎ 9月ブラジル貿易収支(予想:91.00億ドルの黒字)
○インド(マハトマ・ガンジー生誕日)、中国(国慶節)、香港(国慶節の翌日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
29日08:02 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「9月のFOMCでの金利据え置きは適切だった」
「FRB、金利の次の動きを決めるまでデータを検証する時間ある」
「今後の動向はインフレ次第」
「政策の手掛かりとして労働市場を注視」
29日12:08 鈴木財務相
「急激な変動にあらゆる選択肢を排除せず適切に対応」
「為替相場で防衛ラインはない」
「円安がだいぶ進展、強い緊張感を持っている」
29日14:38 カザークス・ラトビア中銀総裁
「欧州中央銀行(ECB)、しばらく金利を据え置く見通し」
29日16:20 フローデン・リクスバンク(スウェーデン中銀)副総裁
「インフレは正しい方向に進展しているが、まだなすべきことがある」
「クローナは過小評価されている」
「次回の会合も、来年の最初の会合も不確定のまま」
29日23:42 全米自動車労組(UAW)のショーン・フェイン委員長
「UAWはフォードとGMに対するストライキを拡大」
「フォードとGMの交渉は有意義な進歩を遂げていない」
30日01:48 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁
「政策金利はピークまたはそれに近い水準にある」
「2023年のインフレ率を約3.25%、24年は約2.5%と予想」
「24年のGDP成長率は1~1.25%に減速すると予想」
「FRBの政策が経済とインフレに影響を与えるには時間がかかるだろう」
「24年の失業率は4%強に上昇するとみている」
「しばらくは制限的な政策が必要になると予想」
「労働市場の不均衡が縮小しつつある多くの兆しある」
30日02:07 イエレン米財務長官
「政府機関の閉鎖は実際に困難な状況を引き起こす可能性」
「米上院での協議が前進することを期待」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=転換線を目前に下げ渋る>
下影小陽線引け。一時148.53円と25日以来、4日ぶりの安値まで下振れた。しかし一目均衡表・転換線148.52円を目前に下げ渋り149円台へ戻して週の取引を終えている。
転換線は上昇が続く見込みで、やや下で上昇中の21日移動平均線とあわせて下支えとなりそう。一目・基準線147.08円も上昇傾向が続く見込みで長期的なサポートになるとみる。高値圏を維持して底堅く推移しそうだ。
レジスタンス2 150.89(9/27-29下落幅の倍返し)
レジスタンス1 150.10(ピボット・レジスタンス2)
前日終値 149.37
サポート1 148.52(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=転換線こなしても21日線が重し>
上影小陽線引け。一時1.0617ドルと、一目均衡表・転換線1.0613ドルを小幅に上回った。だが、同水準では売り圧力にさらされ押し戻されている。低下傾向が続く転換線を日柄の経過を味方に克服することはできそうだが、低下中の21日移動平均線1.0661ドルが次の重しになる。一目・基準線もやがて切り下がり抵抗になる見込み。重い動きが続くだろう。
レジスタンス1 1.0617(9/29高値)
前日終値 1.0573
サポート1 1.0524(ピボット・サポート2)
<ユーロ円=雲の切り上がりとともに地合い強めると予想>
小陽線引け。一目均衡表・基準線や転換線ほか多くの主要テクニカル指標が推移する157-158円台レンジで上下した。基準線や転換線は現水準付近の動きが続く見込み。相場もしばらくこのレンジを維持して、158円台へ向けて上昇する一目・雲の上限が切り上がるタイミングで地合いを強めると予想する。
レジスタンス1 158.45(9/20高値)
前日終値 157.95
サポート1 157.41(9/29安値)
<豪ドル円=転換線や基準線を支えとした底堅い推移想定>
上影小陽線引け。96.92円まで上振れが先行したものの、直近の主要サポートである一目均衡表・転換線からややかい離した同水準から押し返された。目先的な重さを示唆する長い上ひげを形成したが、上昇傾向が続く見込みの転換線や、下値に控える一目・基準線95.26円などを支えに底堅い推移が続くことが想定できる。
レジスタンス1 96.92(9/29高値)
前日終値 96.06
サポート1 95.73(日足一目均衡表・転換線)
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