週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

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    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    FRB 議長はじめ要人発言に注目

    ◆ドル円、金利見通しを巡る思惑に一喜一憂

    ◆米金融システム不安の再燃に注意

    ◆ユーロドル、利上げ期待が徐々に後退で上値限定的に

    予想レンジ

    ドル円 132.00-136.00

    ユーロドル 1.0700-1.1050 ドル

    5 15 日週の展望

    ドル円は、引き続き米金利見通しを巡る思惑で上下する展開が想定される。また、米地銀の経営状況などを含むリスクオフ要因がくすぶるなかで金利や株価動向に左右されるだろう。

    まず、米国の金利見通しについては、米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で利上げに関するフォワードガイダンスが変更されたため、利上げ停止を示唆したと市場は捉えた。また、今週発表された 4 月米消費者物価指数(CPI)は前年比が 2 年ぶりに 4%台まで鈍化したため、利上げ停止への思惑が一段と高まったほか、7 月会合での 0.25%利下げ確率が 4 割程度まで上昇。現状としては年内の利上げ停止および 7 月からの利下げ開始を市場は予想しているが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長をはじめ米当局者はあくまでも今後の金利見通しについては「データ次第」としているうえ、利下げについて言及しているメンバーいないことからも、依然として市場との認識の乖離が生じていることは確かだろう。

    この乖離を埋めるために、来週は要人発言に注目が集まりそうだ。特に 19 日にはパウエル FRB議長がバーナンキ元 FRB 議長と対談する予定となっており、金融政策についての踏み込んだ発言がみられるかどうかに注意したいところだ。経済指標としては、15 日に 5 月米 NY 連銀製造業景気指数、16 日に 4 月小売売上高、18 日に 5 月フィリー指数などの発表が予定されている。

    リスクオフ要因としては、米債務上限問題について「6 1 日にもデフォルトの可能性」などの報道が相次いで伝わっており、「X デー」を巡って一喜一憂することになるだろう。また、11 日にパックウエスト・バンコープが預金流出を発表したことにより米金融システム不安が再燃しており、来週以降も突発的な関連ニュースなどに注意を払う必要があるだろう。

    ユーロドルは、ナーゲル独連銀総裁をはじめ、仏・スペイン中銀総裁がそれぞれ「利上げが最終局面に近づいている」ことを示唆したため、利上げ継続期待が徐々に後退しており、上値は限定的となりそうだ。また、金融システム不安がくすぶっており、リスクオフ局面ではユーロドルは売られやすい地合いとなる。

    5 8 日週の回顧

    ドル円は、週前半は 135 円を挟んだ狭いレンジ取引が続いていたが、4 月米 CPI 2 年ぶりの低水準を記録したことが分かると米・中長期金利の急低下とともに下落。米金融システム不安が再燃したことでクロス円が売られると、つれる形で 133.75 円まで下値を広げた。ただ、133 円台では押し目買いが入るなど一段安にはなっていない。

    ユーロドルは上値が重い。週明けこそ 1.1054 ドルまで上昇したものの、ECB メンバーからのハト派的な発言も嫌気され 1.0900 ドルまで売りに押されている。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、神経質な展開

    RBA、追加利上げの公算が高まる

    ◆豪ドル、5 月分の RBA 理事会議事要旨に注目

    ZAR、対ドルでは重要な安値目処が間近に

    予想レンジ

    豪ドル円 87.50-92.50

    南ア・ランド円 6.65-7.40

    5 15 日週の展望

    豪ドルは神経質な展開となりそうだ。豪準備銀行(RBA)は 2 日に開催された金融政策決定理事会で、据え置きとの市場予想に反して 25bp の利上げ(3.60%から 3.85%)を決定した。声明文でも「インフレ率は依然として高すぎる」「金融政策の一層の引き締めが必要になるかもしれない」などと言及するなど、追加利上げの可能性を否定しなかった。また、5 日に公表された四半期金融政策報告でも追加利上げについて言及。利上げ局面の終了も視野に入れていた市場は軌道修正を迫られる格好となり、短期先物市場では夏頃までの追加利上げを織り込みつつある。

    一方、米国では 2-3 日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通りに 25bp の利上げを実施したが、声明文から追加利上げに関する文言を削除。次回以降の利上げ打止めの可能性が意識されている。

    これまでの米・豪金利差拡大への思惑が巻き戻されたことで、両国の金融政策公表後は対ドルを中心に豪ドル買いが進んだが、今後も豪ドル買いが継続するかに関しては慎重に見極める必要があるだろう。米国では債務上限問題を巡って景気減速への懸念も高まりつつあり、世界的なリセッション入りへの警戒感が強まれば、リスクに敏感な豪ドル買いを進めにくくなる可能性も出てくる。米政府のデフォルト(債務不履行)は早ければ 6 月 1 日にも訪れるとされており、期限が迫る中でバイデン米大統領と米共和党議会指導部との交渉の行方には注意が必要となる。

    なお、経済指標では 16 日に 5 月ウエストパック消費者信頼感指数や 5 月分の RBA 理事会議事要旨、17 日に 1-3 月期四半期賃金指数、18 日に 4 月雇用統計が公表予定。特に RBA 議事要旨では 6月以降の金融政策について新たなヒントが得られるか注目しておきたい。隣国ニュージーランド(NZ)では、18 日に 1-3 月期四半期卸売物価指数(PPI)、19 日に 4 月貿易収支が発表される。

    南アフリカ・ランド(ZAR)はさえない動きとなりそうだ。南アフリカ独自の材料は乏しいものの、市場全般でリスクオフの動きが強まりつつある。今週、対ドルで 2020 年 4 月以来の安値を更新した ZAR は、一段と下落余地が拡大している。ドル円の上昇分で相殺することが難しくなれば、対円でもさらに下値を探る動きとなる可能性が高まるだろう。なお、来週は 16 日に 1-3 月期四半期失業率、17 日に 3 月小売売上高の発表が予定されている。

    5 8 日週の回顧

    豪ドルは上値の重い動きとなった。週初は底堅く推移していたが、米債務上限問題の不透明感や米金融システム不安が再浮上したほか、さえない米経済指標などを受けて次第にリスク回避目的の売りが強まった。ZAR は軟調に推移した。米国などの景気後退懸念が意識されたことでリスクオフムードが強まり、資源国通貨は全般に下げが目立った。対円で年初来の安値を更新。対ドルでも 2020 年 4 月以来の安値を更新し、同月につけた重要な安値目処(19.35ZAR 台)に迫る水準まで売りに押された。(了)

     

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    加ドル、4 CPI に注目

    ◆ポンド、英中銀の次の一手を探る展開

    ◆加ドル、4 月加 CPI に注目、減速傾向は継続か

    ◆ポンドや加ドル、短期金融市場の方向性を見定め

    予想レンジ

    ポンド円 166.00-171.00

    加ドル円 97.50-101.50

    5 15 日週の展望

    ポンドはイングランド銀行(英中銀、BOE)の次の一手を探りながらの展開か。BOE 11 日、市場予想通り政策金利を 4.25%から 4.50%に引き上げた。前週に米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が行った利上げに沿った決定だ。議事要旨では「インフレが持続するなら追加引き締めが必要」とし、その後ベイリーBOE 総裁も高過ぎるインフレ率に警戒感を示した。

    今回の英金融政策に対する市場の反応は、まずは金利上昇からポンド買いと素直だったものの、その流れは続かず。四半期金融政策レポートで示された「年末にかけてインフレ率が急速に低下」との見通しが意識されたもよう。またレポートでは、インフレの低下傾向は 2024 年も続き、年後半には 2%目標を達成できると予想。これを受けて短期金融市場は、夏までの更なる引き締めに対する期待度をやや縮小させている。英金融政策を通過したポンド相場は、暫く足もとの景気動向を一つずつ確かめながらの値動きとなりそうだ。16 日の 4 月雇用統計や週平均賃金の結果で利上げ織り込み度に変化があるか注目される。

    カナダでは来週、週を通して経済指標が発表される。加ドルはそれらの結果を見定めながらの取引となりそうだ。週初には 4 月住宅着工件数、その後は消費者物価指数(CPI)、週末には 3 月小売売上高の結果が明らかになる。やはり最も注目されるのが 4 月 CPI だろう。来月 7 日のカナダ中銀(BOC)金融政策決定会合の前の重要な指標としては、今月末に 1-3 月期国内総生産(GDP)が予定されている程度。雇用統計(5 月分)は中銀会合後の 2 日後だ。そうなると今回のインフレ動向が会合に与える影響はいつも以上に大きいかもしれない。

    前回 3 月分の CPI は前年比 4.3%と市場予想に沿った伸び率だったものの、2 月から 0.9 ポイント減速し、21 年 8 月以来の低い上昇率だった。BOC が重要視する CPI トリムも前年比 4%台で 1年 1 カ月前の水準まで鈍化。マックレム BOC 総裁は今月初め、インフレ率は約 3%まで低下するとの見通しを示しており、4 月 CPI も鈍化基調が続く可能性は高そうだ。もっとも同総裁は、中銀目標の 2%にインフレ率が回帰するのはまだ困難との見解も明らかにしており、市場が期待し始めている早期利下げについてもけん制している。CPI 結果を受けた短期金融市場の方向性が加ドルの動向を左右しそうだ。

    5 8 日週の回顧

    ポンドや加ドルは買いが先行。前週末の強い米雇用統計や、地銀リスクの後退を受けた流れが続いた。ポンド円は 171 円台に乗せ、英金利先高観も支えにポンドドルは上値を試す動き。米 CPI後には 1.2680 ドルまで年初来高値を更新した。ただ、その後は英金利の伸び悩みで上値を切り下げている。加ドルは、前週発表の 4 月雇用統計が予想よりも強く、週をまたいで加ドルに資金が向かった。原油相場の上昇にも後押しされ、対円では 101 円半ば、対ドルで 1.33 加ドル前半まで堅調に推移。ただ、週後半にはリスク回避の動きが強まり、加ドルは売り戻された。(了)

     

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