米国雇用統計の影響―NFPの好サプライズでドル急騰、賃金の伸びの弱さに不透明感も

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先週金曜日に発表された6月分のNFP(米非農業部門雇用者数)は222,000と、事前予測の175,000を大きく上回る好サプライズとなりました。さらに5月分の138,000というショッキングな数値は今回152,000に上方修正され、いくらかダメージは軽減されたようです。
ただ雇用統計全体としては様々な側面を示しており、例えば平均時給の変動は事前の+0.3%に届かず+0.2%で、5月の+0.2%も+0.1%に下方修正されました。賃金の伸び悩みがインフレ成長の遅れを更に悪化させる懸念が残ります。さらに失業率も、事前予想や先月データで4.3%だったところが4.4%と上がっており、好材料とはならないものでした。

データからFRBの意向をどう読むか?
前述のように今回の雇用統計全体としては意味を様々に含んでいますが、まず最も注目すべきNFPで事前予測を大差で上回っていることです。FRBにとっては、米国の雇用情勢の堅調さと過去数ヶ月の平均新規就業者数の勢いへの確信を強め、よりタカ派的政策を進める裏づけとなるでしょう。ただインフレ成長の低さは難題として残ります。今回の雇用統計に表れた賃金の成長の鈍さから、6月のFOMCなどでFRBが表明している成長率への自信への疑問の声は高まっていきそうです。マーケットの反応を見ると、FRBによる年内の利上げに対する投資家の見通しが雇用統計発表直後からやや後退しています。現時点ではまだ米国の金融政策の不透明感が市場から拭い去られていないといえるでしょう。

マーケットの反応
今回の雇用統計の様々なデータの多面性に呼応して、発表直後のマーケットの反応も多様でした。まず反射神経的に見られたのはドルの急騰です。その後、NFP以外のデータの不調さが受け止められるにつれ、反落しました。そして改めてドルは足がかりを得て上昇し直しています。一方、金価格はセオリー通り逆の動きを見せ、発表直後に急落、その後反転上昇、そしてドルの上昇につれて下落しています。米国株は発表に急騰で反応、そのまま時間外で上昇に乗り、オープン後も好調を保って木曜からの下落から回復しました。
ドル円は、円の需要後退と相まって上昇、節目の114.00付近のレジスタンスレベルを狙う勢いです。

今週の見通し
以上のような背景からの今週の見通しですが、注目の通貨ペアは前述のドル円、そして米ドル/カナダドルです。今週はBOC(カナダ銀行)の金融政策レポートと政策金利の発表がありますが、BOCからの最近のコメントで利上げが近いことが示唆されたこともあり、カナダドルは強い勢いで上昇し、米ドル/カナダドルは安値を更新しています。事前予測では0.25%の利上げが見込まれています。この通りになった場合、比較的不透明性を抱えるFRBの米ドルをカナダドルが相対的に押さえることになり、次の節目のサポートラインである1.2800を目指して下降していくことになるかもしれません。