ドル円見通し:「ホルムズ封鎖」楽観論で原油下落、小枝日銀委員・ウォーシュ氏に注目
ドル/円は、マクロ環境に支えられているように見える中でも159を上回る水準を維持するのに苦戦している。足元では原油価格の急落や米国債利回りの低下を受け、短期的にはドル/円の下振れリスクが高まりつつある可能性がある。
著者: デイビッド・スカット(FOREX.com アナリスト)
翻訳: 有里 林檎
2026年5月22日 午後13:06
・原油タンカーのホルムズ海峡離脱を受け、原油価格と米2年債利回りが低下
・ドル/円の相関分析は、短期金利差が依然として主な原動力であることを示す
・2026年に2回の利上げが織り込まれるなか、小枝日銀審議委員の講演に注目
・159円の上抜けに失敗し、ドル/円は調整圧力が強まりやすい状況
湾岸関連ニュースが原油と利回りに影響
ドル/円は引き続き、原油価格と日米の金融政策見通しに強く左右されており、当面は湾岸情勢の動向や日銀の小枝審議委員の発言に加え、米経済指標が相場の主導要因となる見通しだ。
原油、金利、ドル/円の連動性は20日にも改めて鮮明となった。ブレント原油が約6%下落し、米2年債利回りもおよそ8ベーシスポイント低下したことが、ドル/円にはやや下押し圧力として作用した。これらの動きは、複数の大型原油タンカーがホルムズ海峡から無事に離脱したとの報道がきっかけとなった。中には、2カ月以上にわたり湾岸地域に足止めされていた韓国向けクウェート原油を積載した船舶も含まれており、同地域からの実需ベースの供給が徐々に回復に向かうとの期待を高めた。
また、米国とイランの新たな合意が近いとの別の報道も、相場の動きを後押しした可能性がある。ただし、こうした見方はここ数週間繰り返し浮上しているものの、現時点では海峡の本格的な再開につながる明確な兆しは確認されていない。
金利差が依然として主導要因
今回の動きは、ドル/円が引き続き短期金利の格差、特に日米間の金利差に大きく左右されていることを改めて示した。相関分析によれば、ドル/円と日米2年債スプレッドの関係は、過去5営業日および20営業日でそれぞれ0.92、0.73と極めて強い水準を維持しており、いずれも同期間における米2年債利回りそのものとの相関よりもわずかに強い関係となっている。
相関分析
出所:TradingView
これは、ドル/円にとって日米の中央銀行の政策見通しがいかに重要であるかを改めて浮き彫りにしている。
湾岸情勢の動向は、原油価格や米連邦準備制度理事会(FRB)の政策見通しを通じて引き続き影響を及ぼすものの、日銀関連要因も依然として重要であり、21日後半(日本時間)に予定されている日銀審議委員・小枝淳子氏の講演への注目度を一段と高めている。
小枝委員はタカ派姿勢を試される
小枝委員は日銀内でも比較的タカ派寄りのメンバーの一人と見られており、これまで日本の実質金利は依然として極めて低い水準にあると指摘するとともに、緩やかな政策正常化の継続を概ね支持する姿勢を示してきた。
出所:Bloomberg
小枝委員の講演を前に、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は、6月の25ベーシスポイントの利上げ確率を約78%織り込んでおり、7月までには同幅の利上げが完全に反映されている。また、年末までには2回目の利上げもほぼ織り込まれている。
もっとも日銀にとっての課題は、政策正常化が進められている一方で、その発信が慎重かつハト派寄りに受け止められるケースが多く、引き締め観測が持続的に高まりにくい点にある。国内金利の観点から円高を促すには、小枝委員は市場がこれまで繰り返し慣れてきた慎重なトーンではなく、よりタカ派寄りのメッセージを打ち出す必要がありそうだ。
ウォーシュ氏が最大の焦点か
小枝委員の発言以外では、今後24時間、米経済指標の発表が相次ぐが、最重要級の指標は多くない。その中では、週間新規失業保険申請件数や速報購買担当者景気指数(PMI)が、FRBの政策見通しや短期ゾーンの米国債利回りに影響を与える可能性があるため、最も注目を集めるとみられる。先物市場では今年中に約13ベーシスポイント、来年半ばまでに約26ベーシスポイントの引き締めが織り込まれている。
日本では23日に全国消費者物価指数(CPI)が発表される予定だが、東京都区部CPIが約3週間前に先行して発表されるため、足元では市場に大きなサプライズをもたらすケースは少ないだろう。
こうした中、週末に向けた最大の注目材料は経済指標ではなくワシントン発となる可能性がある。市場では、ドナルド・トランプ大統領が22日(米国時間)の就任式で正式に発表する予定の次期FRB議長ケビン・ウォーシュ氏の発言に注目が集まっている。
159円で反落、地合いが変化か
ドル/円:日足チャート
出所:TradingView
ドル/円は、原油価格や米短期金利の低下を背景に、過去2週間にわたって続いていた上昇トレンドを崩している。直前数日間において159のレジスタンス突破に苦戦していた経緯もあり、こうした動きを踏まえると、このトレンド転換が維持されれば新たな局面に入る可能性がある。
現状では、足元の水準をすぐ下回る位置にある50日移動平均線が重要なポイントとなっている。これを下抜けた場合、先週のブレイクアウト水準である157.92近辺まで調整するリスクが高まる可能性がある。さらに下値では157や156が注目される水準で、特に後者は月初めごろに観測された介入関連とみられるフローの中で強い売り圧力を吸収した水準として意識されやすい。
上値では159.00が引き続き重要な水準となっており、足元の値動き次第では、この近辺の水準を軸にトレードの組み立てが意識されやすい。仮に159.00をしっかり上抜ける展開となれば、160および160.73が次の焦点水準となる。
一方、オシレーター系指標は方向感について概ね中立を示しているものの、上昇に有利な環境にもかかわらず159を上回る水準を維持できなかった点を踏まえると、短期的には押し目買いよりも戻り売りが選好されやすい地合いとなっている。
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(5月21日付記事「USD/JPY Outlook: Hormuz hopes hit crude as traders eye Koeda, Warsh」、FOREX.comのマーケット・アナリストDavid Scutt著)