ドル円急落の裏側、円買い観測とキャリートレード解消:ドル円見通し
ドル/円は現在、マクロ市場で最も注目されるテーマの一つとなっている。週末には、米財務長官が円購入の検討を示唆していると広く報じられ、市場の関心を集めた。
3週間前のドル/円相場では、急激な下落と予想外の2度にわたる為替介入が市場を驚かせた。しかし、米国のインフレ率が高止まりする一方で、日本のインフレ率は依然として低水準にあることから、ドル/円のファンダメンタルズ面での上昇基調は維持されている。相場が下押しするたびに押し目買いが入り、高値だけでなく安値も切り上がる展開が続いている。 こうした状況は、今後数週間にわたり、円安を進める市場参加者と、それをけん制する当局との攻防が続く可能性を示唆している。
2026年8月18日 午後13:28
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• ドル/円はこれまで押し目買いが優勢な展開となっているものの、買い手は依然として160.00円の節目を明確に上抜けるほどの勢いを示せていない。
• 為替介入への警戒感は依然として強いものの、米国と日本のファンダメンタルズ面における格差はなお続いている。米国ではインフレ率が3.4%と目標を上回っており、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ期待が根強い。一方、日本のインフレ率は1.7%にとどまっているため、日銀が金融引き締めを長期間維持できるとの見方には依然として慎重な声が多い。
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政府・日銀と米財務省による2度にわたる為替介入の衝撃は徐々に薄れ、市場参加者は再びドル/円の上値を試す動きを強めている。これは、ドル/円のキャリートレードを巡る根本的な問題を浮き彫りにしている。日米両国が人口動態や経済構造が大きく異なる点を踏まえると、ドル/円の適正水準がどこにあるのかという疑問が改めて浮上する。
確かに、日本が2022年に消費者物価指数(CPI)が4%前後まで上昇していた局面でも利上げを見送ったことは、現在の円安局面の一因となっている可能性がある。高齢化の進展や長年にわたる経済停滞を背景に、日本では将来的なインフレ期待が大きく高まるとの見方は限定的だ。また、足元のインフレ動向を見ても日米の差は鮮明である。日本の総合CPI上昇率は直近で1.7%となった一方、米国では先週発表されたCPIが3.4%と依然として高い水準にある。
このような状況を踏まえると、米国は追加利上げの可能性を完全には排除できないという難しい立場に置かれている。一方、日本では日銀の使命(物価安定目標)を前提にすると、同様の対応が求められているわけではない。こうした背景を考えると、ドル/円の水準がさらに上昇してもファンダメンタルズ面からは一定の説明が可能とみられる。しかし、それは米国と日本の双方にとって望ましい状況とは言い難い。
日本にとっては、円安が進むことで好ましくないレベルのインフレを招く可能性がある。一方、米国にとっては、ドル高が進むことで、貿易面で不利な状況につながりかねない。理想を言えば、日米両国ともドル/円が145円から150円程度の水準で推移することを望んでいるだろう。しかし現時点では、160.00円が市場にとって重要な防衛ライン(分岐点)となっている。

以前にも触れたが、現時点ではドル/円の上昇余地には理論上の上限があると考えられる。政府・日銀と米財務省の双方が、ドル/円が165円を明確に突破するのを容認する可能性は低いからだ。そして、その水準は165円だけでなく、164円、さらには160円にも当てはまるかもしれない。実際、これまでのところ買い手は160円の大台を積極的に試そうとはしていない。
ただし、為替介入直後にも指摘したように、ドル/円は調整局面では依然としてトレンドに沿った魅力的な取引機会を提供している。大きな逆行局面の後は介入リスクが相対的に低下しやすいうえ、買い戻しを迫られるショートポジションも残っていると考えられる。また、高金利通貨であるドルを支えるファンダメンタルズも依然として健在だ。
こうした状況は、2022年11月や2023年、あるいは2024年7月のように、市場でリスク回避姿勢やドル/円に対する警戒感が一気に強まらない限り、大きく変わることはないだろう。
ポジションが一方向に偏った市場では、いったん流れが反転すると参加者が売買に殺到し、大きな変動につながりやすい。ただし、そのためには投資家の不安感が強まり、損失拡大への懸念を引き起こす「きっかけ」が必要となる。今回その要因となり得るのは、米国経済指標の弱含みだろう。実際、先週のデータにはその兆候がわずかながら見られた。しかし、その影響はFRB当局者による相次ぐタカ派的な発言によって少なくとも一部は相殺された。伝統的にハト派色が強いFRBを考えると、これはやや意外な展開とも言える。
また、もう一つトレンドを揺るがす可能性があるのが、日本のインフレ率の上振れである。この点については金曜日朝に8月分の全国CPIが発表される。コアCPIは1.8%と予想されており、依然として日銀の2%目標を下回る見込みだ。しかし、10年債利回りが3%に近づくなか、円買いを志向する投資家に新たな材料を与える可能性もある。
もっとも現時点では、レジスタンスは横ばいで推移する一方で、高値を切り上げる動きが続いており、短期的な主導権は依然として買い手が握っている。安値切り上げの流れが崩れれば、より大きな相場転換の兆候となる可能性がある。しかし、そのようなシナリオはまだ現実のものとはなっていない。
買い方が上値を突破する展開となれば、次に注目されるのは160円の大台となる。ただし、160円を超えたからといって、当局が直ちに対応に動くとは限らない。市場が意識する「防衛ライン」は160.64円付近、あるいは日銀が介入に踏み切る前の2024年に付けた161.95円の高値まで切り上がる可能性がある。

グローバル経済において、根本的な市場のテーマや相場の流れを構築する可能性のある主要なイベントや指標とは? 毎週更新される経済指標カレンダーで世界の主要イベントを確認できます。 (8月17日付記事「USD/JPY Following the Path of Least Resistance」、StoneXシニアマーケット・アナリストのJames Stanley著)
ドル/円は現在、マクロ市場で最も注目されるテーマの一つとなっている。週末には、米財務長官が円購入の検討を示唆していると広く報じられ、市場の関心を集めた。
14日の米国株式市場は上昇しており、ナスダックとS&P 500は史上最高値近くで推移している。投資家は米中首脳会談の動向を注視するとともに、米国の小売売上高の発表を見極めようとしている。
数カ月ぶりに、ドル/円が単純な「押し目買い」の取引ではなくなっているようだ。介入リスク、過度なポジションの積み上がり、そして弱気なテクニカルシグナルの出現が、ドル/円市場の様相を一変させている。