【本日の東京為替見通し】今週はFOMC、まずはクレディ・スイス買収の影響を見定め

Article By フィナンシャルアナリスト

【前日の為替概況】ドル円、131.56円まで下落 金融システム不安や予想を下回るインフレ期待

17日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は131.85円と前営業日NY終値(133.74円)と比べて189銭程度のドル安水準だった。前日に反発したスイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価が再び下げたほか、大手銀行11行による支援が決まったファースト・リパブリック・バンクの株価が30%超急落するなど、金融システム不安を巡る警戒感は根強く、ダウ平均が一時510ドル超下落。リスク・オフの円買い・ドル売りが優勢となり、一時131.56円と214日以来約1カ月ぶりの安値を更新した。「ドイツ銀行など少なくとも大手4行がクレディ・スイスとの取引を制限している」との一部報道も投資家心理の悪化につながった。

米ミシガン大学が発表した3月消費者態度指数(速報値)が63.4と予想の67.0より弱い結果となったほか、併せて発表した消費者の期待インフレ率が予想を下回ったことも米金利の低下とドル売りを促した。

ユーロドルは続伸。終値は1.0670ドルと前営業日NY終値(1.0610ドル)と比べて0.0060ドル程度のユーロ高水準だった。欧州の金融機関全般への警戒感からユーロ安・ドル高が進み、2130分過ぎには一時1.0612ドル付近まで値を下げた。

ただ、オセアニア時間に付けた日通し安値1.0608ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。低調な米経済指標や米金利低下に伴うドル売りも強まり、4時前に1.0685ドルと日通し高値を更新した。市場では「週末を控えたポジション調整目的のユーロ買い・ドル売りが入った」との声も聞かれた。

ユーロ円は反落。終値は140.67円と前営業日NY終値(141.91円)と比べて124銭程度のユーロ安水準。日本時間夕刻に一時142.21円と日通し高値を付ける場面もあったが、欧州株が下げに転じると一転円買い・ユーロ売りが優勢となった。米地銀の経営悪化への懸念から米国株が軟調に推移したことも相場の重しとなり、2330分過ぎに一時140.16円と日通し安値を更新した。ただ、ユーロドルの持ち直しにつれた買いが入ると141.20円付近まで下げ渋った。

メキシコペソは下落。WTI原油先物価格が一時1バレル=65.17ドルと202112月以来約13カ月ぶりの安値を更新すると、産油国通貨であるメキシコペソに売りが集まった。対ドルでは一時18.9885ペソ、対円では6.95円までペソ安に振れた。

同じく産油国通貨とされるカナダドルも軟調だった。対ドルでは一時1.3773カナダドル、対円では95.82円まで値を下げた。

 

【本日の東京為替見通し】今週はFOMC、まずはクレディ・スイス買収の影響を見定め

今週は21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えてはいるものの、本日の東京外国為替市場では、まずスイス金融再編の影響を見定めながらの取引か。

スイスでは19日、金融再大手UBSグループが財務不安の高まっていたクレディ・スイス・グループを買収することで合意。これを受けて早朝のオセアニア市場では、ドル円が132円半ばまで上昇する局面があったもののすぐに押し戻された。ここからはアジア勢の本格参入を待つことになる。

CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、0.25%の利上げ確率が6割程度、据え置き確率が4割程度。5FOMCでは据え置き確率が高くなり、6FOMCでは利下げ確率が高まり、年内4回(7月、9月、11月、12月)は、利下げ確率が高く、年末のFF金利誘導目標は3.75-4.00%と示唆されている。

昨年12月のFOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)は、2023年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)を5.10%(※FF金利誘導目標5.00-25%)と予想していた。パウエルFRB議長は、今年2月のFOMC後の会見で、年内の利下げの可能性は想定せずと述べ、37日の議会証言で、利上げペース加速の用意がある、と述べていたが、市場の見立ては逆行している。

21-22日のFOMCでは、16日の欧州中央銀行(ECB)理事会のように金融安定よりも物価安定に軸足を置いて0.25%の第9次利上げに踏み切るのか、それとも金融安定に軸足を置いて据え置きを決定するのか、要注目となる。

20231月の米国の経済指標は、米国景気が減速はするものの、景気後退は避けられる「ソフト・ランディング(Soft Landing)」や景気後退に陥る「ハード・ランディング(Hard Landing)」ではない、「ノー・ランディング(No Landing)」の可能性を高めていた。しかし、3月の米シリコンバレーバンク(SVB)やクレディ・スイスの経営危機は、20083月のベアスターンズの経営危機から9月のリーマンショックまでの金融危機を彷彿とさせており、1月の好調な米経済指標が「偽りの夜明け」だった可能性を高めている。

米国は119日に債務上限(314000億ドル)に到達し、2月年末時点での債務残高は314593億ドルとなっており、債務上限が引き上げられなければ、7月辺りに政府資金が枯渇する「Xデー」を迎える。

米国10年債の利回りは、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ(ゼロ⇒4.50-75%)により、20223月の2%台から今年3月の4%台まで上昇し、価格は12%程度下落している。すなわち、31兆の債務を米国10年債と仮定した場合、米国債の保有者は3兆ドル強の損失を被っていることになり、現状の小さな金融危機は、2008年のようなグローバル金融危機

に拡大する予兆に過ぎないのかもしれない。

FRBは、「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を新設して、米国債や住宅ローン担保証券を含む適格担保を「時価評価」ではなく「額面評価」とし、流動性を供給することで準量的金融緩和と言える。しかし、0.25%の利上げを断行した場合、金融引き締めを継続することになり、整合性が取れなくなる。

 

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

08:50 ◇ 日銀金融政策決定会合における主な意見(3910日分)

 

<海外>

16:002月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比▲0.5%)

19:001月ユーロ圏貿易収支

23:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演

23:00 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演

○メキシコ(ベニート・フアレス生誕日)、休場

 

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

 

【前日までの要人発言】

17日14:18 黒田日銀総裁

「必要があればマイナス金利幅の拡大も選択肢」

 

17日15:47 ミュラー・エストニア中銀総裁

「物価上昇のペースは依然速すぎるため対応が必要」

「SNBの介入で意思決定が容易になった」

「クレディ・スイスは何年も前から問題を抱えていた」

17日17:26

「利上げが終了したと結論付けるのは時期尚早」

「コアインフレが弱まっている兆候を示していない」

 

17日16:23 ビルロワドガロー仏中銀総裁

「インフレとの戦いが最重要課題」

「予告していたように、0.50%の利上げを行った」

「欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げは、欧州の銀行への自信の表れ」

「フランスと欧州の銀行は非常に堅実」

「市場の緊張を注意深く監視していく」

 

17日17:09 シムカス・リトアニア中銀総裁

「ターミナルレートには達していない」

「昨日が最後の利上げだったとは依然として信じていない」

「インフレ傾向は消滅していない」

 

17日17:20 神田財務官

「最近の市場動向を意見交換」

「欧米一部金融機関の影響で市場にリスク回避的動き」

「日銀と連携し金融市場の動向を注視」

「各国当局と連携しつつ強い警戒感をもって注視」

 

17日18:46 岸田首相

「3者会合で政府日銀で緊密連携を確認した」

「様々なリスクを想定して日銀とも連携」

「内外市場動向・経済への影響を強い警戒感をもって注視したい」

 

17日19:33 ロシア中銀声明

「次回会合で利上げを検討する可能性」

 

17日20:10 OECD(経済協力開発機構)

「2023年世界成長率予想を前回の+2.2%から+2.6%、2024年を+2.7%から+2.9%に上方修正」

「2023年米成長率予想を前回の+0.5%から+1.5%へ上

方修正、2024年を+1.0%から+0.9%へ下方修正」

「2023年ユーロ圏成長率予想を前回の+0.5%から+0.8%、2024年を+1.4%から+1.5%へ上方修正」

 

17日23:37 エルドアン・トルコ大統領

「フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)への加盟を批准する」

※時間は日本時間


〔日足一目均衡表分析〕

<ドル円=三役好転が解消、雲の上限を抵抗に戻り売り>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回っているが、雲の中で引けたことで三役好転は解消された。シグナルは買い優勢な展開ではあるものの、抱き線で反落して転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。

本日は雲の上限を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス2      133.763/17高値)

レジスタンス1      132.70(日足一目均衡表・雲の上限)

前日終値                        131.85

サポート1           130.29日足一目均衡表・雲の下限

サポート2           129.81(2/10安値)

 

<ユーロドル=1.0630ドル台の転換線を念頭に置いた取引>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯中。しかし2手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。

本日は転換線1.0638ドルを念頭に置き、押し目買いスタンスで臨みたい。1.05ドル半ばの16日安値を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1      1.0731(日足一目均衡表・雲の下限)

前日終値                        1.0670

サポート1           1.05513/16安値)

 

<ポンド円=3/17高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回るも、遅行スパンは実線を上回り、雲の中で引けた。主要線の位置関係は中立だが、抱き線で反落して転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。

本日は161.41円で横ばいの転換線を念頭に戻り売りスタンスで臨み、162円前半の17日高値を上抜けた場合は手仕舞い

レジスタンス1      162.193/17高値)

前日終値                        160.56

サポート1                       158.85(日足一目均衡表・雲の下限)

 

NZドル円=基準線や雲の下限を念頭に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。孕み線で反落して転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。

本日は83円前半の基準線や雲の下限を念頭に戻り売りスタンスで臨み、14日高値を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1      84.063/14高値

前日終値                        82.58

サポート1                       81.14(3/16安値

 

chart 1

chart 2
  情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社

 

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