
【前日の為替概況】ドル円、7日ぶり反落 米債務上限問題の交渉停滞報道が伝わる
19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は7営業日ぶりに反落。終値は137.98円と前営業日NY終値(138.71円)と比べて73銭程度のドル安水準だった。米長期金利の指標である米10年債利回りが一時3.7186%前後と約2カ月ぶりの高水準を付けると円売り・ドル買いが先行。22時30分前に一時138.65円付近まで値を上げた。
ただ、アジア時間に付けた日通し高値138.73円や前日に付けた年初来高値138.75円がレジスタンスとして働くと失速した。米債務上限問題を巡る米政府と野党共和党の交渉について「共和党の交渉担当者が突然退席し、交渉が行き詰まっている」との報道が伝わると、米国株相場の失速とともにリスク回避の円買い・ドル売りが活発化。イエレン米財務長官が銀行幹部らに「一連の銀行破綻を受け一段の銀行合併が必要になる可能性がある」と警告したことも投資家心理の悪化につながり、0時30分過ぎに一時137.43円と日通し安値を更新した。
もっとも、前日の安値137.29円や200日移動平均線が位置する137.10円がサポートとして働くと買い戻しが進んだ。米10年債利回りが再び上昇に転じたことも相場の支援材料となり、138.14円付近まで下げ渋った。
ユーロドルは4日ぶりに反発。終値は1.0805ドルと前営業日NY終値(1.0770ドル)と比べて0.0035ドル程度のユーロ高水準だった。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が「政策金利は依然として持続的に高水準である必要」と述べたほか、シュナーベルECB専務理事が「金利についてまだやるべきことがある」「金利を十分に景気抑制的な水準にする」と発言すると、ECBの利上げ継続観測が改めて意識されてユーロ買い・ドル売りが入った。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「信用不安を考慮すると、政策金利は想定されていたほど上昇する必要がないかもしれない」と発言したこともドル売りを促し、一時1.0829ドルと日通し高値を更新した。ただ、米長期金利の上昇基調が継続したことから、引けにかけては伸び悩んだ。
ユーロ円は6日ぶりに反落。終値は148.99円と前営業日NY終値(149.39円)と比べて40銭程度のユーロ安水準。ECBの利上げ継続観測が改めて意識されると一時149.80円と日通し高値を付けたものの、米債務上限交渉が中断したと伝わると米国株の失速とともにリスク回避の円買いが優勢に。0時30分過ぎに148.72円と日通し安値を更新した。ただ、売り一巡後はドル円の下げ渋りにつれた買いが入り、149.26円付近まで下値を切り上げた。
【本日の東京為替見通し】米債務上限の関連報道に注視、米金利見通しもポイントに
本日の東京為替市場では、再び警戒感が高まりつつある米債務上限問題の動向を気にしながらの取引か。また、先週末にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が示唆した6月利上げ休止に対するアジア・オセアニア勢の反応にも注目したい。
広島で19-21日に開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)に参加したバイデン米大統領は20日、米国のデフォルト(債務不履行)回避は可能だとする考えを再び示した。その前日、米大統領はG7の夕食会を途中退席し、債務上限引き上げを巡る交渉についての報告を聞いていた。
もっともバイデン大統領の言葉とは裏腹に、複数のメディアがホワイトハウスと野党・共和党の間の溝の深さを報じている。先週半ばには楽観論が広がりつつあっただけに、話し合い難航となった場合の反動は大きそう。交渉官レベルの協議は21日にも行われ、大統領と共和党・マッカッシー下院議長の会談は米国東部時間22日午後に再開されるもよう。交渉の行方を見守りながら、相場は一喜一憂することになるだろう。
パウエルFRB議長は先週末、「さらなる引き締めについては現時点では何も決まっていない」と参加した会議で発言。パウエル議長は「データや変わりつつある見通しの進展を注視し、慎重に評価する余裕がわれわれにある」とも述べ、追加利上げの必要性を訴えた一部FRB高官とは異なる姿勢を示した。パウエル発言を受けがCMEのフェドウォッチ(FedWatch)は、6月会合で0.25ポイントの利上げ織り込み度が35%前後から15%前後まで低下した。
本日も先週末の動きを引き継いで足もとの金利先高観の調整が進めば、ドルも積極的に上値を試すのは難しそうだ。ただFedWatchが見込む年末利下げについては、米金融当局者が否定し続けてもおり、必ずしも市場参加者の総意というわけではない。また、植田日銀総裁のもとでの調緩和策の継続が確実視されるなか、日米金利差が大きく縮まるということも考え難い。米債務上限問題について不透明感はあるものの、金利面では下がったところで買いというスタンスでまだ良いのではないか。
なお、今週は23日に5月米PMI速報値や同月リッチモンド連銀製造業景気指数、24日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(2-3日分)、25日に1-3月期米GDP改定値、26日に4月米PCEコアデフレーターの発表が予定されている。。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◎ 3月機械受注(予想:船舶・電力除く民需 前月比0.4%/前年比1.4%)
<海外>
○15:30 ◇ 1-3月期スイス鉱工業生産
○17:30 ◎ 4月香港消費者物価指数(CPI、予想:前年同月比2.0%)
○17:45 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演
○18:00 ◇ 3月ユーロ圏建設支出
○18:00 ◎ デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演
○20:30 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○21:30 ◎ ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
○23:00 ◎ 5月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲17.0)
○23:15 ◎ レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○23:15 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○23日00:05 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、バーキン米リッチモンド連銀総裁、討議に参加
○23日00:05 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演
○23日02:30 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演
○カナダ(ビクトリア・デー)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
19日10:06 植田日銀総裁
「(米債務上限問題)米国債デフォルトなら世界経済に甚大な影響」
「経済・物価・金融情勢に応じ機動的に対応」
「金融市場安定に努める」
「金融機関の担保は確認している」
「いざという時の資金供給に問題ない」
「現在はしっかりと金融緩和を続けていくことが必要」
「粘り強く金融緩和を継続していく姿勢は不変」
「必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」
「拙速な政策転換により、2%達成の芽を摘んでしまう場合のコストが極めて大きい」
「出口に向けた金融緩和の修正は時間をかけて判断していくことが適当」
「緩和の副作用だけ評価するのではなく、経済・物価への効果どの程度打ち消しているかが重要」
「消費者物価の前年比、今年度半ばにかけ2%下回る水準までプラス幅縮小」
「物価は需給ギャップによって決まってくる」
「01年導入の量的緩和政策、経済への刺激効果は限定的にとどまった」
19日12:07 ホワイトハウス
「債務上限協議は着実に前進している」
「デフォルト回避へ議会が行動を取ると確信している」
20日01:15
「予算の話し合いが困難になるだろう」
「予算に関して両者間に実質的な相違がある」
「超党派の債務解決策に向けて一生懸命取り組んでいる」
19日12:07 ラガルドECB総裁
「ECBは、インフレ率を2%に下げるため必要な決断下す」
「政策金利は依然として持続的に高水準である必要がある」
「インフレが緩和し始まるか重要な局面にある」
19日22:47 G7首脳
「中国の核戦力増強は世界や地域の安定にとって懸念」
「イランに対し核エスカレーション停止を強く求める」
20日00:06 シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事
「金利を十分に景気抑制的な水準にする」
「ECBはユーロ圏の銀行に流動性を供給するツールを持つ」
「ECBはインフレ率を目標に戻すために行動を続ける」
「ECBは必要なことは何でもやり続けることができる」
「金利についてまだやるべきことがある」
「(金利)高水準でしばらく据え置く必要」
20日00:08 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「物価の安定は好調な経済の基盤」
「インフレ率は目標の2%を遥かに上回っている」
「インフレを抑制できなければ痛みが長引く」
「FOMCはインフレ率を2%に戻すことに強くコミット」
「高インフレが重大な困難をもたらすことを強く認識」
「信用不安を考慮すると、金利は十分に高く上昇する必要がない可能性」
「FRBは最近までさらなる引き締めを期待していた」
「さらなる引き締めについては現時点では何も決まっていない」
20日00:14 イエレン米財務長官
「銀行幹部らにさらに合併が必要な可能性を伝えた」
20日01:37 米共和党のマッカーシー下院議長
「昨年を下回る歳出が望ましい」
「バイデン大統領とは話していない」
「(債務上限交渉について)何も進展していない」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=調整が入るも200日線を維持>
下影陰線引け。年初来高値圏で調整が先行した。一時137.43円まで下押している。
相場の強弱を判断する上の分岐点とされる200日移動平均線にやや近づく格好となった。しかし下げ渋り底堅さを示す下ひげを伴う足型を形成。上昇波形は多少崩れかけたが、まだ上向きの流れを維持しているとみる。同線を下抜けた場合は17日安値や一目均衡表・転換線136.25円が位置する136円台で下げ渋りのポイントを探ることになる。
レジスタンス1 138.75(5/18高値=年初来高値)
前日終値 137.98
サポート1 137.15(200日移動平均線)
サポート2 136.31(5/17安値)
<ユーロドル=90日線付近の攻防、転換線が重し>
小陽線引け。目先の抵抗だった一目均衡表・雲の下限1.0796ドルを回復した。1.0821ドル前後で推移する90日移動平均線前後の攻防となっている。ただ、同線をこなしても、低下傾向の一目・転換線1.0884ドルが抵抗となり、戻りを重くする展開を想定して臨みたい。
レジスタンス1 1.0884(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0805
サポート1 1.0760(5/19安値)
<ユーロ円=基準線を挟んで上下>
陰線引け。日足一目均衡表・基準線148.87円を挟んで上下する展開となった。戻す場面はあるが149円台に定着しきれない感もあり、148.50円付近で推移する21日移動平均線も意識されるはっきりしない動き。底堅さを示すのは、下値148円割れで推移している一目・転換線が上昇して、下支えされる水準が切り上がってきてからになる可能性もある。
レジスタンス1 149.80(5/19高値)
前日終値 148.99
サポート1 148.50(21日移動平均線)
<豪ドル円=200日線付近が重い、転換線など意識されそう>
小陰線引け。一時92.36円と、92円前後で低下中の200日移動平均線を上回る場面もあった。しかし押し返され91.72円と、同線を下回って週の取引を終えている。2日に92.44円まで上振れた際も、同線を超えた水準での売り圧力にさらされ反落した。200日線が抵抗となり続けるとみられ、18日安値91.10円や一目均衡表・転換線91.08円を試す場面もあるか。
レジスタンス1 92.36(5/19高値)
前日終値 91.72
サポート1 91.08(日足一目均衡表・転換線)
情報提供元:DZHフィナンシャルリサーチ社
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